【書評】零戦神話の虚像と真実 零戦は本当に無敵だったのか

低速時限定だった零戦の機動性

 また零戦は、米軍機に比べて非常に優れた運動性を有していたともいわれますが、それも低速時に限るものであり、480km/h以上になると極端に操縦桿が重くなってまともに戦えなくなりました。そして米軍は480km/h以上で零戦と戦うよう徹底することによって、零戦は格闘戦で不利を強いられるようになります。

 しかし実は、戦闘機の飛行性能は空中戦においてそれほど重要ではありませんでした。なぜならば機関銃の命中率は極めて低く、「動く相手には99%命中しない」からです。

 空中戦で撃墜されたものの8割は自分を撃った相手を見ておらず、ほとんど水平飛行中に撃墜されました。つまり空中戦はいかに早く相手を発見し先制攻撃に持ち込むかがカギであり、「飛行性能は高いほうが良いが最低限あれば十分」と結論づけられています。

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真珠湾攻撃のために空母「赤城」から発進する零戦21型。

 零戦の真の問題は速度や機動性、そしてよく言われる「防弾板の欠如」ではなく、先制攻撃を加える能力にありました。零戦は照準器や前方視界が非常に悪く、射撃のチャンスを活かすことができません。また無線機が通じなかったことから僚機との連携に欠け、互いに背後を監視し合うなどのチームプレイが不可能でした。

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コメント

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2件のコメント

  1. 読書感想文を読む限り素晴らしい本ですね。99%当たらないとなると対爆撃機で戦闘機の損害はほぼ0になります。素敵な理論です。
    この手の本で不思議なのはなぜ今現在CAF等零戦と米軍機を両方飛ばせることができる人たちがいるのに、何れも飛ばしたことの無い人たちの空想で済ませるのか。取材不足です。
    低速時のみの運動性能やキルレシオの問題はその通りですが、約200ノット程度なら大戦中のどの戦闘機も格闘戦で勝てないというのはCAFパイロットが認める事実ですし、初期は制空権を握っていたのも事実です。
    火の気のない所に神話は生まれません。

  2. 近年ではオスプレイのDuelシリーズなどでも
    損害報告が照らし合わされてやっぱり零戦強いじゃん
    って方が主流ですね
    また、日本の戦果報告は目立って他国より大きいというわけではありません
    ニューギニアでの台南空の本を書いた海外の研究家は
    著書で何度か両軍の戦果誤認は7倍で等しかったとしていますし
    戦果0が米軍報告確実撃墜20不確実12の合計32に化けた例もあります
    (日本ニュースで有名な1944年1日17月の空戦、全機帰着の黒板が大写しになるのが有名ですね)