【書評】零戦神話の虚像と真実 零戦は本当に無敵だったのか
零戦で本当に問題だったこと
さらに零戦は、射撃自体にも問題を抱えていました。米軍では1機撃墜に平均1~2万発の弾丸を必要とし、ふんだんに補給を行ったのに対し、日本軍は1個戦隊あたり月間8万発しか供給できず、そもそも戦場に投射する火力に欠いていました。さらに弾丸自体にも欠陥を抱え、ようやく命中しても致命的な打撃を与えることが困難でした。
またニューギニア方面ではパイロットのほぼ全員がマラリアにかかるなど健康管理も劣悪で、過酷な環境から機材の故障も多く、およそ8割は戦闘以外の事由で損失しています。
零戦は決して革新的な戦闘機ではなく、無敵でもなかったかもしれませんが、少なくとも同世代機と比較した限りでは決して悪い戦闘機ではありませんでした。しかし零戦は「空中戦以外」の面において、戦う前から敗れていたのです。
多くの問題はほんの少しの意識の差で改善できたものばかりだったと、本書はいいます。しかし切羽詰った日本の状況ではそこまで意識を向けることができず、日本とアメリカの総合的な国力の差が「零戦の敗北」という結果をもたらしました
本書は“神話”によって過度に美化・誇張された伝説から脱却し、零戦の実像を知る史料になるでしょう。
【了】
Writer: 関 賢太郎(航空軍事評論家)
1981年生まれ。航空軍事記者、写真家。航空専門誌などにて活躍中であると同時に世界の航空事情を取材し、自身のウェブサイト「MASDF」(http://www.masdf.com/)でその成果を発表している。著書に『JASDF F-2』など10冊以上。
読書感想文を読む限り素晴らしい本ですね。99%当たらないとなると対爆撃機で戦闘機の損害はほぼ0になります。素敵な理論です。
この手の本で不思議なのはなぜ今現在CAF等零戦と米軍機を両方飛ばせることができる人たちがいるのに、何れも飛ばしたことの無い人たちの空想で済ませるのか。取材不足です。
低速時のみの運動性能やキルレシオの問題はその通りですが、約200ノット程度なら大戦中のどの戦闘機も格闘戦で勝てないというのはCAFパイロットが認める事実ですし、初期は制空権を握っていたのも事実です。
火の気のない所に神話は生まれません。
近年ではオスプレイのDuelシリーズなどでも
損害報告が照らし合わされてやっぱり零戦強いじゃん
って方が主流ですね
また、日本の戦果報告は目立って他国より大きいというわけではありません
ニューギニアでの台南空の本を書いた海外の研究家は
著書で何度か両軍の戦果誤認は7倍で等しかったとしていますし
戦果0が米軍報告確実撃墜20不確実12の合計32に化けた例もあります
(日本ニュースで有名な1944年1日17月の空戦、全機帰着の黒板が大写しになるのが有名ですね)