リニアの命運握る難工事、ついに始まる 南アルプスは東海道の新丹那

「温泉余土」や断層に悩まされた丹那トンネル

 東海道新幹線が起工式を新丹那トンネルで行った理由、それはこのトンネルの進捗状況が、東海道新幹線全体の開業時期を左右する“最重要工区”とされていたからです。

 その付近は火山地帯で、丹那断層をはじめとする複数の断層帯が存在。新丹那トンネルの前に、この場所で在来線の東海道本線・丹那トンネルを建設した際は「温泉余土」という膨張する困難な地質、大量の湧水などに悩まされました。工期は1918(大正7)年から7年間の予定だったものの、完成したのは1934(昭和9)年。想定の倍以上である16年という歳月を要しています。

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難工事だった丹那トンネルへ進入する在来線列車。熱海側坑門の真上には慰霊碑が建立されている(2009年10月、恵 知仁撮影)。

 こうした背景から東海道新幹線はその将来を決める“最重要工区”として、新丹那トンネルで起工式を行いました。また昭和10年代半ばに、東京~下関間を高速鉄道で結ぶ「弾丸列車」の建設が始められた際も、困難が予想されたこの熱海~三島間のトンネルが最初期に着手されています。

 ちなみに、弾丸列車計画で掘られたトンネルは戦況の悪化により建設が中断されますが、そのときのトンネルを昭和30年代に東海道新幹線へ流用。建設を再開し、新丹那トンネルになりました。

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