陸自への最強機導入も頓挫 時代から遅れる戦闘ヘリ

劇的に進化し、ヘリの脅威になった「牽制球」

 かつて対空砲や地対空ミサイルといった兵器は“基本的に命中しない”ものでした。あくまでも爆撃機やヘリコプターの行動を妨害するための「牽制球」でしかなく、1960年代頃は50~100発の地対空ミサイルを発射してようやく1機、撃ち落とすことができる程度でした。

 ところが近年、地対空ミサイルの性能が劇的に向上。適切に射撃された場合、ほぼ確実に命中を見込めるようになりました。そして実戦において、戦闘ヘリコプターを含む航空機全般は地対空ミサイルの脅威にさらされた場合、ほとんど無力であることが明らかになっています。

 例えば、アメリカ陸軍の「アパッチ・ロングボウ」および「アパッチ」、そしてアメリカ海兵隊のAH-1W「スーパーコブラ」は2003(平成15)年のイラク戦争において、たったの1ヶ月弱の戦闘で8機を喪失しました。

 また2014年、政府と親ロシア派が激しく対立するウクライナにおいてボーイング777型旅客機が地対空ミサイルによって撃墜された事件は、まだ記憶に新しいことでしょう。この事件の裏側では、ウクライナ軍機にMiG-29戦闘機やSu-25攻撃機など、10数機に達する被害が出ていることも明らかになっています。

「アパッチ・ロングボウ」の有す破壊力は極めて強力ですが、それはあくまでもテロリストといった、十分な対空火器を持たない相手に対する作戦においてのみ発揮可能であり、例えば中国軍など、強力な防空網を展開すると推測される相手に対してはほとんど無力。戦闘ヘリコプターはいまや“時代遅れ”ともいえるのです。

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老朽化が進む陸自のAH-1S「コブラ」対戦車ヘリコプター。AH-64Dの調達中止によって、後継機計画は白紙のまま(関 賢太郎撮影)。

 また陸上自衛隊に13機が配備された「アパッチ・ロングボウ」は、およそ半数が訓練や整備などで使用できなくなるため、作戦にはせいぜい6機程度しか投入できないでしょう。

 日本も導入を予定している最新鋭ステルス戦闘機F-35Aより高価な1機110億円にも達してしまったこの、極めて少数の「アパッチ・ロングボウ」。それをどのように活かすべきか、陸上自衛隊は大きな課題を抱えています。

【了】

Writer: 関 賢太郎(航空軍事評論家)

1981年生まれ。航空軍事記者、写真家。航空専門誌などにて活躍中であると同時に世界の航空事情を取材し、自身のウェブサイト「MASDF」(http://www.masdf.com/)でその成果を発表している。著書に『JASDF F-2』など10冊以上。

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コメント

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2件のコメント

  1. 使うこともない戦闘機をどれだけ買うかは大人の玩具を欲しがる自衛隊のおごりである。
    国税を節約することは国を豊かにすることです。戦争も出来ない国が装備を増やしてどうするのですか。
    企業を儲けさせるだけですから自重してください。

  2. 夜間、匍匐飛行するヘリをどうやって捕捉するのかまで書いて欲しかったな。