引退の74式戦車“とっておく”必要ある? 日本も始める「装備品の長期保管」 選択を間違えれば“破滅”の恐れ

防衛省が引退した装備品の長期保管を始めます。そのひとつが、「74式戦車」です。他国のような「モスボール」を日本でも取り入れる格好ですが、旧式の74式戦車、本当に“とっておく”必要があるのでしょうか。

古すぎる? 74式戦車は現代に役立つのか

 74式戦車は1960年代に開発された、「戦後第2世代」に分類される戦車です。2024年3月に全車が退役となったのも記憶に新しいところです。

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74式戦車と同世代ながら、増加装甲の装着と近代的な射撃統制装置を備えた新型砲塔の搭載により防御力と攻撃力を高めたレオパルト1(竹内 修撮影)。

 戦後第2世代戦車は、開発中に実用化された対戦車ミサイルの攻撃を回避するため、装甲防御力を犠牲にして機動性を高めていました。当時の対戦車ミサイルは速度も遅く、着弾まで人間がケーブルを使って誘導する有線誘導式が主流だったので、ある程度機動性が高ければ、そのような戦い方もできたのかもしれません。

 しかし現在の対戦車ミサイルは速度も向上し、発射後に誘導を必要としない「撃ちっぱなし」能力を持つものが主流になっています。これは電子装置の高性能化によるところが大きいのですが、同様の理由で戦車の射撃統制装置の能力も向上し、自ずと砲の命中精度も向上しています。このため戦後第2世代戦車の開発時に想定されていた戦い方は、ほぼできなくなっています。

 74式戦車と同世代に分類されるドイツのレオパルト1などは、増加装甲の装着や射撃統制装置の更新などで防御力と攻撃力が強化されて使い続けられています。しかし74式戦車は、生産中に防御力を向上するための改良は施されているものの、現役を続けるレオパルト1のような大規模な改修は行われていません。

 また、74式戦車は自ら赤外線光を放って夜間の視界を確保する「アクティブ」式の暗視装置を搭載していますが、現在の諸外国の軍隊が保有する暗視装置は、自ら光を発せずに視界を確保する「パッシブ」式が主流です。74式戦車が夜間戦闘のために暗視装置を起動すれば、それは敵の恰好の標的になるだけです。

 2000年代初頭のように、陸上自衛隊の主要な対処目標が機関銃などの軽火器しか持たないゲリラやコマンド部隊であれば、そのままの74式戦車を予備戦力として保管しておくことにも価値があったのかもしれません。しかし現在の陸上自衛隊には、近代的な装備を持つ正規軍を相手にする能力が求められています。

【とっておきます】これが「長期保管する3つの装備品」です(写真)

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コメント

1件のコメント

  1. 実質そのまま戦車として使うと言うより91式戦車橋や87式自走87式自走高射機関砲とかの部品取りとして保存してる感じだろう