世界最強の戦車は「薄すぎて脆弱」 ウクライナ兵の“悲痛な叫び”は活かされるか? 「アメリカは脅威を知らない」

ロシアがウクライナへ対し特別軍事作戦を実行してから3年が経とうとしています。アメリカはM1戦車を供与していますが、最前線のウクライナ兵からは現代戦に対応していないとの声が。アメリカは耳を傾け、戦訓を反映できるでしょうか。

戦訓からM1を改造したウクライナ軍

 ウクライナ軍には「世界最強戦車」と喧伝されたM1A1エイブラムス戦車がアメリカから31両供与されました。しかし、ウクライナの戦局は必ずしも好転していません。M1は2024年2月に実戦参加が確認され、3日後に最初の1両が撃破された画像がSNSに投稿されています。

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FPVドローンの連続攻撃を受けて行動不能になり、道路上で停止したM1A1だが、目立った損傷は見られず、乗員は脱出に成功している(画像:ロシア国防省X)。

 民間OSINT(公開情報調査)サイト「オリックス」によれば、少なくとも17両が失われたそう。12月下旬にロシア軍のFPVドローン攻撃を受けるウクライナ軍のM1の動画が、ロシアのテレグラムチャンネルに投稿されました。

 少なくとも1発はコープゲージ(ドローンや対戦車ミサイルを防御する目的で装備された格子状の追加装甲)に引っ掛かり、1発が反応装甲ブロック(ERA)によって無効化されています。しかし続いて2~4発が連続して命中し、戦車は行動不能になってしまいます。これは2分以内の出来事であり、ロシア軍のFPVドローンによる対戦車攻撃戦術が向上していることを示しています。

 乗員は無事だったようで、FPVドローンの音が聞こえなくなったタイミングを見計らって戦車からの脱出に成功しています。必死でFPVドローンの追跡をかわし徒歩で友軍にたどり着いたそうです。

 ウクライナ軍幹部は、「乗員が生き残ったのは、M1のブローパネルのような乗員防護設計と、戦訓を学んだウクライナが施した改造の組み合わせのおかげである」と述べています。こうした実戦経験者の証言は貴重です。

 ウクライナ軍は戦訓から、供与された戦車にコープゲージやERAを追加して「ウクライナ戦線仕様」に改造しています。いわゆる「世界最強戦車」も例外ではありません。このウクライナ戦線仕様への取り組みはロシア軍の方が先行しており、戦地急造で手造り感満載の異形AFV(装甲戦闘車)が多く登場するようになりました。この仕様はウクライナ軍でもロシア軍でもすでに標準化されています。

M1へ、ロシアのドローンが突入した瞬間(写真)

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