魚雷40連!? 旧海軍の決戦兵器「じゅうらいそうかん」とは 歴史に翻弄された異形の軍艦

旧日本海軍が造った唯一無二の軍艦「重雷装艦」。魚雷を片側20本一斉発射可という異色の軍艦は一体どのようにして生まれ、実戦ではどうだったのでしょうか。その一部始終を振り返ります。

酸素魚雷の量産成功も追い風に

 こうして、潜水艦や陸上攻撃機、特殊潜航艇(いわゆる小型潜水艦「甲標的」)などの増勢に力が入れられたのですが、その一環として、旧式化した軽巡洋艦に多数の魚雷発射管を搭載し、一斉雷撃によって敵の戦艦や重巡洋艦を沈めようという構想も持ち上がりました。このような主旨で生まれたのが「重雷装艦」です。

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旧日本海軍の軽巡洋艦「北上」。1930年ごろ、重雷装艦への改装前に撮影されたもので、このころすでに旧式化していたという(画像:アメリカ海軍)。

 当時、日本は世界のどこの海軍も実用化できなかった、酸素で燃料を燃やしてスクリューを回す酸素魚雷の実用化に成功していました。それまでの魚雷は空気で燃料を燃やしていましたが、空気には酸素だけでなく二酸化炭素も含まれており、燃え残った二酸化炭素が水中に気泡となって放出されると、くっきりとした白い雷跡を残すので、敵に見つけられやすいという欠点がありました。

 しかし、酸素を使えばすべて燃えてしまうので、雷跡はほとんど生じません。それに空気のように二酸化炭素という燃えないものを含まないので、従来の魚雷に比べて、酸素魚雷の射距離は長くなるというメリットもありました。

 また、軽巡洋艦は本来、駆逐艦部隊の旗艦として司令部が乗り込む目的で造られた艦種なので、同じく酸素魚雷を搭載する駆逐艦と一緒に行動できます。

 そこで、旧式化した軽巡洋艦を第一線の戦力として活用する意味も込め、酸素魚雷を発射する4連装魚雷発射装置を10基、魚雷発射管数で40門を備える、世界でも類を見ない「重雷装艦」が考えられました。片舷で見ると4連装魚雷発射装置5基、魚雷発射管20門の一斉射が可能な異色の軍艦は、駆逐艦部隊を率いて高速で敵艦隊へと突撃し、「魚雷の槍ぶすま」を見舞おうというわけです。

【画像】これが人間魚雷「回天」搭載母艦に姿変えた「北上」です

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