「JAL機とデルタ機の翼接触」事故、米で発生…見えた事実と背景とは? 空港設計に変化の可能性も
シアトルの空港で発生したJAL機とデルタ航空機の接触事故。原因はこれから調査されるものの、概況が説明されています。どのような背景が考えられるのでしょうか。
機体の設計トレンドに空港はついていけてる?
航空機は空港内を地上走行するときは「タキシーウェイ」と呼ばれる誘導路を走行する決まりがあります。この誘導路は舗装の上に黄色の実線で描かれ、線が見えない夜間は緑の照明により位置を表示する仕組みです。
パイロットはこの中心線に機体の中心をあわせ、駐機場と滑走路を行き来することで、センターラインをキープしたまま地上を走れるのです。
今回の接触事故では、この誘導路の上を走行していたにも関わらず、除氷中のデルタ航空機と接触したのであれば、舗装に描かれたマーキングに問題がある可能性も考えられます。
事故が起きたワシントン州・シアトルは、アメリカ北西海岸に位置し、上空は重度の着氷条件が発生することで有名です。世界初の超音速旅客機「コンコルド」も試験機がワシントン州に派遣され冬のシアトル上空で着氷状態での試験飛行を行いました。そんな場所に位置するシアトル・タコマ国際空港においては、除氷作業が極めて重要な作業といえ、仮にマーキングに問題があるのならば、早急に改善が必要です。
また、今回の事故のもう一つの背景として、航空機の翼幅が以前より大きくなっている傾向にあることも考えられるでしょう。翼幅を伸ばし、翼を大きくすることは燃料消費を減少させるため巡航中の空気抵抗を下げる効果があります。
今回事故を起こしたJAL機はボーイング787-9で全長62.8mであるものの、翼幅は60.12m。全長70.6 mの2階建て胴体で「ジャンボ機」と呼ばれ、かつて超大型機の象徴とされたボーイング747(在来型)よりも50cmも幅が広いのです。
現在ボーイングが開発を進めている大型機「777-9」でもそのトレンドが継続されており、全幅は71.8mにも及びます。そのため、主翼の先端が折り畳める機構が採用され、翼端を折り畳んだ状態で全幅64.8mまでサイズダウンすることで、既存の駐機場施設でも問題なく運用できるような設計となっています。
事故の原因はこれから調査が始まる状況下であるため、決して断定をすることはできません。ただ、こうした新型機の傾向も踏まえて、今回の地上接触事故の詳細が判明した時点で、除氷場の位置変更をする対策が講じられることもあり得るのではと筆者は考えています。
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