「なんでこんなに安いんや?」隣の駅まで100円“激安運賃”の謎 大阪の私鉄“延伸”1年 新線区間でも安い!

千里中央~箕面萱野間の延伸から間もなく1年を迎える北大阪急行電鉄は、「日本一安い初乗り運賃」でも知られます。開業から半世紀経っても、隣の駅までワンコインという低廉な運賃を維持し続けているのはなぜでしょうか。

値上げしても利用者も「納得」

 北急は、1980年代半ば以降、地下鉄御堂筋線の輸送力増強にあわせて、新型8000系を投入し、1995年から10両運転をスタート。あわせて駅で自動改札機やエスカレーターの設置も行いました。エレベーターも整備し、他社より早くバリアフリー化を完了しました

 この設備投資にあわせ、初乗り運賃は1986年に50円、1989年に60円、1995年に80円と値上げします。それでも、1997年の阪急の初乗り運賃は150円、大阪市が200円でしたから、安さは際立ちます。

 それでも北急の初乗り運賃は2014年に90円、2017年に100円と上がります。新型9000形への置き換えや駅施設の改修、可動式ホーム柵の設置を理由としました。値上げの原因が明確だから、利用者も納得できます。90年代後半から低迷していた輸送人員も回復していきます。

 前後して北急は2016年に千里中央~箕面萱野間の新線工事に着手します。工事の見直しで開業が3年遅れの2023年度末に延期されたうえ、事業費も600億円から874億円に膨れあがりました。事業費の多くは大阪府や箕面市、国が担いますが、北急も110億円を負担しています。

 もしかしたら、北急は大幅な運賃値上げに踏み切るかも……と心配されましたが、2025年現在も初乗り運賃は100円のままです。新線区間の千里中央~箕面萱野間については、加算運賃60円が加算されることになりましたが、それでも初乗り160円で済みます。

 開業から1年が経ち、箕面船場阪大前駅は大阪大学箕面キャンパスと近接した新しい街区の中心となりつつあります。終点の箕面萱野駅は、商業施設みのおキューズモールとつながると共に、阪急バスなどとの乗り換えがスムーズな新しい交通拠点となりました。

 大阪万博と北急開業から55年が経ち、大阪湾岸では大阪・関西万博が開催されます。さらなる飛躍を遂げる北急沿線、JR大阪駅や新大阪駅も近い場所にあるので、ぜひ大阪に来たついでに訪ねてみてください。

【全区間乗っても安い!】これが「北急の激安運賃」だ!!(画像)

Writer:

1972年奈良県生まれ。大阪市立大学大学院経営学研究科前期博士課程修了。国内全鉄道と海外80ヶ国以上を旅しながら鉄道史や資料調査に没頭する。主な著書に『鉄道未成線を歩く 国鉄編』『同 私鉄編』、『開封!鉄道秘史 未成線の謎』など。

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