新型爆弾!? それとも燃料タンクか? 米軍「あやしい艦載機」が装備し始めたのは… グアム演習で撮影に成功!
アメリカ海軍が運用するEA-18G「グラウラー」電子戦機に新たなポッドが搭載されるようになっています。一見すると燃料タンクもしくは爆弾に見える円筒状の装備品、これは電子戦機には欠かせないものでした。
実績あるベテラン品を更新したワケとは?
AN/ALQ-99の運用が始まったのは1972年のことで、最初の実戦参加はベトナム戦争でした。このときにEA-6B「プラウラー」電子戦機に搭載されて以降、1986年のリビア爆撃、1991年の湾岸戦争、1999年のバルカン戦争、2003年のイラク戦争など、アメリカ軍が参加する主な戦争に軒並み用いられています。
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ちなみに、ポッド自体は同じものが使われたワケではなく、初配備から10種類もの改良型が開発されており、アメリカ海軍の現役電子戦機EA-18Gでも使われ続けています。しかし、いかに改良を重ねても基本設計が古いためか信頼性が低く、加えてEA-18Gが装備した場合、機首に装備するAESAレーダーと干渉したり、航空機の最高速度が低下したりといった問題点が指摘されていました。
そこで、新たに開発が始まったAN/ALQ-249はそういった欠点を軒並みなくしており、「NGJ:次世代ジャマー」というそのものズバリな名称で開発・配備されましています。
では、既存のAN/ALQ-99と見比べた場合、どこが違うのでしょうか。外見上の一番の差は、ポッド先端の発電用のプロペラがなくなり、内蔵式に変わったことです。電子妨害ポッドは妨害するために電力が必要であり、AN/ALQ-249では先端のプロペラを回すことで発電しそれを電源としていました。
しかし、先端部にプロペラを装着していると、敵からレーダーを照射されたときに反射波を生み出し被発見率を上げてしまうほか、搭載機の速度低下といった悪影響もあったとか。そこで、AN/ALQ-249ではラムエア・タービンを内蔵し、使用時には側面のインテークを開放して発電することで、対レーダーと空力的によりメリットのある形状に改められています。
また、内部には機体の全周をカバーするために複数のAESAアレイが内蔵されており、AN/ALQ-99よりも長い距離で強力なジャミング能力があると言われています。
ただ、このようにプロペラのない形状になったがゆえに、一見すると燃料タンクかトラベルポッド、もしくは爆弾に思えるような外観になったのも確か。その点で秘匿性が高まったとも言えるかもしれません。
なお、AN/ALQ-249では、対応する周波数に応じて3種類のモデルの開発が進められており、今回の「コープノース25」で使われたALQ-249 NGJ-MB(ミッドバンド:2~6GHz)以外に、NGJ-LB(ローバンド:100MHz~2GHz)とNGJ-HB(ハイバンド:6~18GHz)の配備が予定されています。
2025年2月現在は、まだAN/ALQ-99とAN/ALQ-249が併用して運用されていますが、今後はすべての電子妨害ポッドがAN/ALQ-249ファミリーに置き換わる予定です。
Writer: 布留川 司(ルポライター・カメラマン)
雑誌編集者を経て現在はフリーのライター・カメラマンとして活躍。最近のおもな活動は国内外の軍事関係で、海外軍事系イベントや国内の自衛隊を精力的に取材。雑誌への記事寄稿やDVDでドキュメンタリー映像作品を発表している。 公式:https://twitter.com/wolfwork_info
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