日本屈指の「海に近い新駅」開業に水差す“縄張り争い” 「バス停移設して」勧告むなしくポツンとそのまま どうしてこうなった?
鹿児島市内に新駅「仙巌園」が開業しました。日本屈指ともいえる「海に近い駅」ですが、プラットホームからの美しい景色とは対照的に、駅前での“縄張り争い”が祝福ムードに水を差す事態となっています。
渋滞対策「不安視されていたのは確かだ」
鹿児島交通が指摘した仙巌園駅開業に伴う道路渋滞の悪化は、「不安視されていたのは確かだ」(地元住民)といいます。
というのも、国道10号の左折車線を進むと日豊本線の踏切があり、鹿児島中央方面への普通列車が新たに仙巌園駅に停車するため、駅開業前と比べて踏切の遮断時間が長くなって道路渋滞が悪化する恐れがありました。
そこで、JR九州は2つの対策を実施しました。1つ目は、遮断機が下りる列車の通過地点を踏切に近づけたこと。通常、踏切は手前のある地点を列車が通過すると遮断機が下りる仕組みになっています。
もう1つは、通勤通学のため道路が渋滞する午前7~8時台に、鹿児島中央方面の普通列車4本が仙巌園駅を通過するようにしました。仙巌園の開園時間は午前9時のため、この時間は駅の利用者が少ないとの判断も働いています。これらの施策で踏切が遮断される時間を短縮しました。
しかしながら、鹿児島交通は今のところ納得していません。南日本新聞の記事によると、鹿児島交通は「国とは法的に争う」ともコメントしているため、国交省側がバス停標識を撤去するような強硬手段に出た場合には提訴して裁判で争うことも辞さないとみられます。
待望の新駅開業に合わせた車線の拡幅も、新設されたバスベイも使われずにポールで囲まれた光景。それは大海原を望む安らかな風景とは対照的で、諍いが収まっていない異常事態が続いていることを物語っています。
Writer: 大塚圭一郎(共同通信社経済部次長・鉄旅オブザイヤー審査員)
1973年、東京都生まれ。97年に国立東京外国語大学フランス語学科卒、共同通信社に入社。ニューヨーク支局特派員、ワシントン支局次長を歴任し、アメリカに通算10年間住んだ。「乗りもの」ならば国内外のあらゆるものに関心を持つ。VIA鉄道カナダの愛好家団体「VIAクラブ日本支部」会員。
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