「ニンジャ・ブレード」がシャキーンと展開!「爆発しないミサイル」ついに存在が公に

ミサイルといえば、着弾して爆発しその破片などで周辺を加害する兵器というのが一般的ですが、アメリカ空軍のR9Xは弾頭(爆薬)の代わりにブレード(刃)を備えるといいます。そのような特殊なミサイルが遂に実戦投入されました。

人間の盾が通用しない「ピンポイント攻撃」

 アメリカはこれまで、対テロ作戦において民間人への被害を最小限に抑える努力を重ねてきました。しかし、それでもなお完全にゼロとすることは難しく、国際社会からの批判を受けることも少なくありません。R9Xの運用は、ピンポイント攻撃による「合法的な暗殺」という形で戦争犯罪リスクを低減し、国際法を遵守する姿勢を強調する意図もあると考えられます。

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AGM-114R9Xミサイルによって走行中に運転席だけピンポイントで攻撃されたテロリストの車両(画像:アメリカ中央軍)。

 R9Xの存在が初めて報じられたのは2019年頃であり、当時はMQ-9「リーパー」やMQ-1「プレデター」といった無人機で秘密裏に運用されていると考えられていました。しかし、その実態は長らく明らかにされていませんでした。今回の映像公開により、米軍は公式にR9Xの実戦投入を認めた形となります。

 R9Xの高い精密攻撃能力は、物理的な打撃力だけではなく、敵対勢力に対する心理的圧力をも生み出しています。従来の爆発型ミサイルでは、目標の周辺にも被害が及ぶため、それ以外の存在も危険にさらすことを考慮すると、攻撃側も安易に実行するわけにはいきません。

 しかし、R9Xはターゲットのみを確実に排除するため、敵対勢力の指導者に「どこにいても狙われる」という強い恐怖心を植え付ける効果があります。過去のR9X攻撃では、車両の損傷状況から「標的のみが排除され、周囲の被害は皆無だった」との事例が報告されており、これは従来の爆撃手段では実現し得ない攻撃精度を示しています。

 今回のR9Xの映像公開は、米国の精密攻撃能力の高さを世界に誇示すると同時に、敵対勢力に対する強烈な警告としての意味合いを持っていると考えられます。

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Writer:

1981年生まれ。航空軍事記者、写真家。航空専門誌などにて活躍中であると同時に世界の航空事情を取材し、自身のウェブサイト「MASDF」(http://www.masdf.com/)でその成果を発表している。著書に『JASDF F-2』など10冊以上。

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