【交通と安全保障】不仲なんて言ってられない… 軍種別の「統合作戦」は難しいのか 運用の必要性と発展〈前編〉

統合作戦能力とその運用は国防だけでなく、交通システムを守るうえで極めて重要な役割を果たします。我が国を含む多くの国と地域における統合運用の発展と展望、そして課題について、前後編に分けて解説します。

この記事の目次

・陸海空の自衛隊を“まとめる”新組織が発足

・統合運用システムのさらなる発展

・ITの浸透で統合運用システムも急激に発展

・今度はAIが登場 作戦の立て方はどうなっていくのか

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陸海空の自衛隊を“まとめる”新組織が発足

 2025年3月24日、陸海空自衛隊を一元的に指揮する常設組織「統合作戦司令部」が発足します。統合運用は我が国の防衛はもちろん、我が国と世界各国とをつなぐ交通システムを守るうえで極めて重要な役割を果たします。しかし、統合司令部の設立は、あくまで統合作戦能力と運用を指揮する「箱」であって、中身はこれから形付けられていくことになります。

 そもそもなぜ統合作戦能力が必要なのでしょうか。簡単にいうと、陸海空ほかサイバー、宇宙、認知領域における作戦能力を横断的につなぎ合わせ、相乗効果を生み出すためです。近年、軍事技術の発展により作戦領域や戦術が多様化、複雑化していますが、これに対処するには、保有する能力をより効率的に活用し実行できる作戦パターンを増やすことが極めて重要となります。

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朝霞駐屯地で開催された自衛隊中央観閲式で並んだ各旗。左手前から内閣総理大臣旗、防衛大臣旗、防衛副大臣旗、統合幕僚長旗、陸上幕僚長旗、海上幕僚長旗、航空幕僚長旗。5つ星は最高指揮官である内閣総理大臣と、防衛大臣のみ(柘植優介撮影)。

軍種を統合という考え 歴史は古いけれど…

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Writer:

長野県佐久市出身。東京国際大学国際戦略研究所准教授。アトランティックカウンシル上席研究フェロー、パシフィックフォーラムスコウクロフト戦略安全保障センター上席客員フェローなどを兼任。幼少期からイギリス、オーストラリア、韓国、シンガポール、マレーシア、インドネシア、米国などで過ごし、防衛政策・戦略・計画、安全保障、交通政策を専門とする。主著に『Defense Planning and Readiness of North Korea: Armed to Rule』(Routledge)、『2030年の戦争』(日経BP)など。Instagram/X: @tigerrhy

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