【交通と安全保障】自衛隊に発足「統合作戦司令部」 つまり何をするところ? 過去に検討も課題はたくさん〈後編〉
2025年3月、自衛隊に統合作戦司令部が発足しました。陸海空自衛隊を一元的に指揮する常設組織です。前編では、統合作戦能力と統合運用の重要性、今後の発展について記しましたが、今回は、それを構築し確立させるうえでの課題について考えてみます。
この記事の目次
・単に全てをひとつにすればよいというものではない
・「国を守る」という大義は同じだが
・あれ、統合幕僚監部ではダメなの?
・組織改編も必要かもしれない
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前編を読む
単に全てをひとつにすればよいというものではない
統合作戦能力と運用は、陸海空ほかサイバー、宇宙、認知領域での作戦能力をつなぎ合わせて相乗効果を生み出すもので、多様化・複雑化する現代戦と情勢において、必要不可欠です。これは、ロールプレイングゲームにおいて強敵を倒すには、能力や特殊性が異なるキャラクターを強化し、チームとして組み合わせ戦わせなければならないのと似ています。しかし、国防計画の観点から見ると、統合作戦能力と運用を確立するには多くの課題があります。

単にあれやこれを「がっちゃんこ」するのではなく「つなぎ合わせる」必要がありますが、全てをひとつにしようとすると、むしろそれぞれの能力の特徴と効果が埋もれてしまい、運用においても効率性が失われてしまいます。これを考えると、統合作戦能力と運用における最大の課題は、各軍種や能力を効率的に組み合わせられる黄金比率を探ることだと言えるかもしれません。
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Writer: 山口亮(国防・安全保障専門家)
長野県佐久市出身。東京国際大学国際戦略研究所准教授。アトランティックカウンシル上席研究フェロー、パシフィックフォーラムスコウクロフト戦略安全保障センター上席客員フェローなどを兼任。幼少期からイギリス、オーストラリア、韓国、シンガポール、マレーシア、インドネシア、米国などで過ごし、防衛政策・戦略・計画、安全保障、交通政策を専門とする。主著に『Defense Planning and Readiness of North Korea: Armed to Rule』(Routledge)、『2030年の戦争』(日経BP)など。Instagram/X: @tigerrhy