スゴ腕戦闘機パイロットが生み出した「最強の空戦理論」とは? じつは民間機にも活用されています

現代の戦闘機パイロットが教科書のように用いる空戦理論があります。それを生み出したのは米軍の戦闘機パイロットですが、彼は実戦では戦果を出したわけではないとか。ただ、民間機パイロットも基本にしているそうです。

ボイドの空戦理論は民間機でも同じ

 軽量戦闘機計画で示された要求項目は、まさにE-M理論に基づく「最強の空戦戦闘機」そのものでした。このコンペではジェネラル・ダイナミクス(現:ロッキード・マーティン)のYF-16と、ノースロップ(現:ノースロップ・グラマン)のYF-17が最終候補に残り、最終的にF-15と同じエンジンを搭載し、より低コストなYF-16が「F-16」として採用されました。ただ、YF-17も、F-4「ファントムII」の後継を選定する海軍航空戦闘機(NACF)計画を進めていた海軍の目に留まり、「F/A-18」として採用されます。

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E-M理論はエアレースでも応用されている(咲村珠樹撮影)。

 その後のF-16とF/A-18については、語るまでもないでしょう。F-16はアメリカだけでなく約30か国の空軍に採用され、トータルで5000機近い生産数を誇ります。F/A-18もアメリカ海軍・海兵隊だけでなくカナダやオーストラリア、スペイン、フィンランドなど7か国に採用され、大幅に改良されたF/A-18E/Fや派生機種のEA-18Gも活躍しています。これらを鑑みると、ボイドたちが構想した「最強の空戦戦闘機」が、高く評価された結果だといえるでしょう。

 ところでこのE-M理論、空戦機動や戦闘機の設計以外にも応用されていることをご存知でしょうか。それは飛行機を使ったモータースポーツで、決められたレーストラックを飛びタイムを競うエアレースの世界です。

 エアレースでは横方向や垂直方向への旋回を繰り返し、その速さを競います。ここで急旋回し、Gをかけ過ぎてしまうと速度が落ち、結果として良いタイムが出せません。戦闘機の空戦と同じように、エネルギーを失わないよう適切なGで旋回することが重要で、そこにE-M理論が応用できるのです。

 筆者(咲村珠樹:ライター・カメラマン)はエアレースの取材中、実際に元戦闘機パイロットの選手に対し、エアレースとE-M理論の関係について話を聞いたことがあります。その回答は「まさにジョン・ボイドの理論そのものだ」というものでした。

 エアレースでも空戦でも、いかにエネルギーをマネジメントして飛ぶかが勝利への鍵であり、ある意味E-M理論は「エネルギー・マネジメント理論」であるともいえます。ジョン・ボイドが確立した理論は、今もパイロットや戦闘機の設計に、大きな影響を与えているといってよいでしょう。

【なんか違うな…】これが幻の戦闘機「コブラ」です

Writer:

ゲーム誌の編集を経て独立。航空宇宙、鉄道、ミリタリーを中心としつつ、近代建築、民俗学(宮崎民俗学会員)、アニメの分野でも活動する。2019年にシリーズが終了したレッドブル・エアレースでは公式ガイドブックを担当し、競技面をはじめ機体構造の考察など、造詣の深さにおいては日本屈指。

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