“絶対に訪れるべき鉄道路線”いつ乗れる!? 肥薩線「山線」の復旧にJR九州が及び腰の理由 「川線」と明暗分かれる

豪雨で被災したJR肥薩線の八代~人吉間を鉄道で復旧させることでJR九州が2025年4月1日、熊本県と最終合意書を取り交わしました。しかし、残る被災区間、人吉~吉松間の「山線」については、復旧に慎重な姿勢を崩していません。

ホントに出世する!?「出世駅」も

 山線には、ループ線とスイッチバックを併せ持つ日本唯一の駅の大畑(おこば、熊本県)があります。木造駅舎の壁一面を覆っていたのは大量の名刺で、この駅に自分の名刺を貼ると出世すると言われています。

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吉松駅の窓に貼り出された「肥薩線(山線)早期着工復旧は私達の切なる願い」のメッセージ(2025年3月、大塚圭一郎撮影)

 筆者は手元に名刺があったものの、見られるのが恥ずかしいので他人の名刺の裏に貼らせてもらいました。他の人に追い越されて出世コースから外れたのはそのせいでしょうか(笑)。

 肥薩線の駅で最も高い標高536.9mの矢岳駅前には「人吉市SL展示館」があり、蒸気機関車(SL)「D51」が保存されています。このSLも、かつて矢岳~真幸間の「矢岳越え」に挑みました。同区間の1908年に貫通した肥薩線最長のトンネル「矢岳第一トンネル」は、全長が2096.17m、最大勾配が25パーミル(列車が1000m進んだ時の高低差が25m)もある難所です。

 真幸駅は1911年に開業した宮崎県で最初の駅で、風情のある木造駅舎は開業当初から1世紀余り姿を変えていません。

「いさぶろう・しんぺい」が吉松に到着後、筆者は肥薩線・日豊本線を通って鹿児島中央へ向かう特急「はやとの風」に乗り換えましたが、被災後は残念ながらどちらも廃止されてしまいました。

被災も少なく、赤字額も少ないはずの山線

 JR九州によると、豪雨による肥薩線の被害件数448件のうち山線は29件だけで、復旧費も約6億円にとどまると試算されています。

 それでもJR九州首脳は筆者に「山線は沿線に住んでいる人がほとんどおらず、日常利用がないので厳しい。観光列車の運行だけではどうしようもない」と語り、復旧に及び腰の姿勢を示しました。

 山線は被災前、2019年度の1日1km当たり平均通過人員(輸送密度)が106人と、川線の414人と比べ約4分の1にとどまりました。当時の山線は1日3往復だけだったので無理もありません。一方、19年度の営業損益は2億7000万円の赤字で、赤字額は川線の半分未満でした。

【復旧して!!】これが被災した「絶対に訪れるべき鉄道路線」です(地図/写真)

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