とうとうゼロに…「嘉手納の主」な戦闘機 45年の歴史に終止符「台湾情勢が危ういけど」 後継は?
沖縄県にある在日米軍の嘉手納基地から固有の戦闘機がついになくなりました。長らく配備されていたのはF-15C「イーグル」戦闘機です。今後、アメリカ空軍はどうするのでしょうか。実はすでに新型機の配備が決まっているようです。
日本駐留のアメリカ空軍の本命は三沢か?
F-15EXは、見た目こそ旧来のF-15「イーグル」とほぼ変わりませんが、内部はまったくの別物です。最新のミッション・コンピューター、先進的な電子戦システム、フライ・バイ・ワイヤを駆使した最新の操縦装置、高性能なデータリンク能力、拡張された燃料タンクなどなど。これらを融合することで、F-15EXは従来のF-15Cとは全くかけ離れた高性能マルチロールファイター(多用途戦闘機)として生まれ変わっています。

特筆すべきは、その搭載能力です。F-15EXは、空対空ミサイルとともに、精密誘導兵器や巡航ミサイルなど多様な空対地兵器を携行可能であることから、その能力は制空戦闘にとどまりません。戦場のあらゆる局面に対応できる、「空中の万能戦士」としての役割を期待でき、配備されれば第18航空団の作戦能力は大幅に拡張されることになるでしょう。
とはいえ、嘉手納基地には構造的な課題も残されています。その最たるものが、コンクリート製の堅牢なシェルター「掩体」の不足です。中国によるミサイル飽和攻撃などによって基地全体が壊滅的打撃を受けるリスクは無視できません。台湾周辺の緊張感が増す中で、それは問題点となり得ます。
滑走路や誘導路は比較的短時間で復旧できますが、失われた航空機の補充は困難な可能性が高いです。そのため、厳しい見方をすれば、F-15EXは有事の際の戦力としてはほとんど期待することができないかもしれません。実は在日アメリカ空軍の本命は、中国から攻撃を受けにくい青森県に存在し、かつ掩体で防護されている三沢基地のF-35(配備予定)であると言うこともできるでしょう。
F-15EXの嘉手納配備は、2026年3月からと見込まれています。F-15CからF-15EXへの交代は老兵の退場に続く、新たな歴史の始まりなのは間違いありませんが、突発的な有事における脆弱性を抱えたままというのはしばらく変わりそうにありません。そのような不安要素を残したまま、嘉手納基地の抑止力強化と再構築は行われることになりそうです。
Writer: 関 賢太郎(航空軍事評論家)
1981年生まれ。航空軍事記者、写真家。航空専門誌などにて活躍中であると同時に世界の航空事情を取材し、自身のウェブサイト「MASDF」(http://www.masdf.com/)でその成果を発表している。著書に『JASDF F-2』など10冊以上。
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