ETC大規模障害は「思い至らず」 首都高で起こったらどう対応? ETC専用化トップランナーの答え

NEXCO中日本のETC大規模システム障害は、道路各社にETCの課題を突き付けています。なかでも、料金所の「ETC専用化」を強力に推進している首都高の寺山 徹社長が、大規模システム障害についての考え方を示しました。

「首都高ならでは」のリスク 対策の考え方

 都市高速という構造上、首都高にはNEXCO系高速道路のような長い導入路がありません。悪天候や事故による通行障害は、すぐ一般道路にも波及します。寺山社長はETCのシステム障害に関わらず、同社独自の方針があると説明します。

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寺山 徹社長(中島みなみ撮影)。

「私どもは渋滞や滞留を発生させないようにするというのが、大きな課題だと認識している。最近でいうと、2018年の大雪で1週間ほど通行をとめたことがありました。山手トンネルを中心に非常に多くのお客様に滞留を強いてしまった。特にそれ以降、お客様第一で滞留はさせないオペレーションをしようということを心がけている」

 たとえば大雪時に「予防的通行止め」を行い滞留を防ぐ対策なども実施していますが、それ以外でも、「交通事故では、警察の現場検証より前に滞留車両を通過させる協力をお願いしたり、車両火災でも滞留だけは流せるような協議を重ねて(渋滞や滞留を)最小限にする準備をしています」とのこと。

 仮にETC大規模システム障害が起きた場合は、料金所にもこうした対応の応用ができると話します。

「料金所で広域的な通信障害が起きたとなると、渋滞、滞留をさせないことを目的に、速やかに開閉バーを開くなどのオペレーションになるかと思います」(寺山社長)

 ただ、首都高速の料金体系は、NEXCO系高速道路にはない負担を利用者に生じさせる可能性があります。システム障害を伴わない通常の通信不良で料金不払いが起きた場合、同社は利用者に対して、入口と出口となった料金所や時間を指定した利用区間の申告を求めます。利用状況を明らかにできない利用者に対しては、現金車に準じた上限額(普通車で1950円)の請求を行っています。

 ETCシステム障害による渋滞回避のために開閉バーの開放が行われるとしても、現状では利用区間の料金支払いが求められる状況はかわりません。NEXCO中日本は、システム障害の規模を見誤ったことが対応の遅れにつながりました。通過車両に対する首都高独自の危機管理と、利用者に対する通常時からの周知は、すぐにでも始める必要があるのではないでしょうか。

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Writer:

1963年生まれ。愛知県出身。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者を経て独立。行政からみた規制や交通問題を中心に執筆。著書に『実録 衝撃DVD!交通事故の瞬間―生死をわける“一瞬”』など。

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