「中古の空母」で保有国の仲間入り!? アジアの大国が白羽の矢を立てた“40年モノ”一体どう使うの?
海軍力の充実化を急ピッチで進めているインドネシアが、かつてイタリア海軍で運用されていた軽空母「ジュゼッペ・ガリバルディ」の導入を模索していると報じられました。波乱万丈の経歴を持つ40年選手の空母、どう使うのでしょうか。
フォークランド紛争の戦果も踏まえた設計に
2025年3月、Janesなど複数の海外メディアが、イタリアの退役軽空母「ジュゼッペ・ガリバルディ」の購入にインドネシア海軍が高い関心を示していると報じました。同艦は40年近い歴史をもつ古豪です。なぜインドネシアが注目しているのでしょうか。

イタリア海軍は、NATO(北大西洋条約機構)の地中海戦力の中核を担っています。このため同海軍は地中海で活動する旧ソ連海軍に対抗するため、1960年代から軽空母の導入を模索していました。その結果誕生したのが「ジュゼッペ・ガリバルディ」です。
同艦の建造にあたってイタリア海軍は、対航空機戦闘と対潜水艦戦闘だけでなく、対艦戦闘でも戦力となることを求めました。このため同艦は「テセオ」対艦ミサイルの発射装置(改装時に撤去)や三連装魚雷発射管を備えるなど、仮想敵であったソ連海軍のヘリコプター空母やVTOVL空母(垂直着陸機を艦載)に近い性質を備えていました。
1982(昭和57)年に発生したフォークランド紛争で、イギリスがSTOVL(短距離離陸。垂直着陸)空母で運用した「ハリアー」が空対空戦闘における有用性を実証したことから、イタリア海軍は「ジュゼッペ・ガルバルディ」にもハリアーの搭載を希望し、設計段階から艦首にハリアーの発艦に使用するスキージャンプも設けていました。しかし同国では空軍法で「海軍は固定翼機を保有しない」と定められていたため、SH-3D哨戒ヘリコプターのみを搭載して1985(昭和60)年に就役しました。
その後1989(平成元)年に空軍法が改正され、海軍の固定翼機運用が可能になったことから、同海軍はAV-8B「ハリアーII」を入手。ハリアーIIを艦載機に加えた「ジュゼッペ・ガリバルディ」はコソボ紛争やアフガニスタン攻撃などに参加して、有用性を実証しています。
イタリア海軍は「ジュゼッペ・ガリバルディ」の就役直後から2隻目の空母の建造計画の策定に着手しました。当時同海軍は2隻目の空母を「ジュゼッペ・ガリバルディ」よりも高い対空戦闘能力を持つ艦として構想していました。しかし冷戦終結後に浮上してきた対テロ戦といった新たな脅威にNATOが一丸となって対抗する能力を新空母に盛り込んだ結果、新空母には強襲揚陸艦としての機能も付与されることになりました。
また、艦載機として搭載を見込んでいたF-35Bを運用するには、「ジュゼッペ・ガリバルディ」はあまりに小型でした。このため2008(平成20)年に就役した2隻目のSTOVL空母「カブール」(満載排水量2万7100トン)は、「ジュゼッペ・ガリバルディ」(満載排水量1万3850トン)と比較して2倍ほど大きな船体規模を誇ります。
コメント