「ステルス戦闘機ちょうだい!」トルコや中国にラブコール送る「イスラム国家」とは 南アジアの軍拡ますます加速か
南アジアの空は、今まさに「ステルス戦闘機の導入競争」に突入しようとしています。インドより先にステルス戦闘機を配備しようとするパキスタン焦りとは。中国やトルコ、ロシアの思惑なども交錯している模様です。
同じイスラム国家として提携しやすい?
もう1つの選択肢として挙げられるのが、トルコが開発を進める第5世代機「KAAN」です。ただ、「KAAN」は2024年に初飛行したばかりのため、実戦配備となると、さらに10年近い歳月を要すると推察されます。

そのため、現時点では「技術的未完成性」という不確実性を抱えているほか、トルコ自体が本格的な戦闘機量産・運用の実績で乏しいという点も、リスク要因として看過できません。
こうした事情を踏まえれば、早期の戦力化が見込まれるJ-35が、より現実的かつ戦略的な選択肢であると断言できます。実際、最近のパキスタン国内での報道によれば、同国空軍はすでにJ-35の訓練のため、パイロット団を中国に派遣したとされています。これが事実であれば、数年以内にパキスタン空軍がJ-35を実戦配備する可能性は極めて高いでしょう。もし、J-35の導入が数年以内に実現すれば、インドに先駆けてステルス戦闘機を運用する国家としての地位を確立し、向こう10年程度は周辺空域において戦略的優位を保持することが可能となります。
ただ、パキスタンによるステルス機の導入は当然ながらインドを強く刺激し、同様の近代化を加速させる契機となるのは間違いないでしょう。しかし、インドがその期間内にAMCAの完全な戦力化に漕ぎつける可能性は低く、短中期的には外国製ステルス機の導入という暫定的措置を余儀なくされるかもしれません。
南アジアの空は、今まさに新たな「ステルスの競争」に突入しようとしています。J-35、KAAN、AMCA、そしてSu-57、F-35やGCAP各国の国益と技術が交錯するこの地域で次に主導権を握るのは果たして誰なのか。その答えは、数年以内に明らかになるかもしれません。
Writer: 関 賢太郎(航空軍事評論家)
1981年生まれ。航空軍事記者、写真家。航空専門誌などにて活躍中であると同時に世界の航空事情を取材し、自身のウェブサイト「MASDF」(http://www.masdf.com/)でその成果を発表している。著書に『JASDF F-2』など10冊以上。
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