「え、あの車両やめちゃうの?」「わざわざ新車入れるの?」がなぜ相次ぐのか ローカル線車両の“替え時” 元経営者が語る

古い車両が走るのが一つの魅力でもあったローカル線で、車両の引退や、コストがかかっても車両を“新造”するケースが相次いでいます。苦しい懐事情のなかで、各社はどのように車両の入れ替えを判断しているのでしょうか。

燃費がいいより「メンテがしやすい」が大事なワケ

 ローカル鉄道の場合、大手と状況が異なります。車両数が少なく、動力費の比率が小さくなり、メンテナンスの設備や人権費の比率が高くなります。つまり燃費の良さよりも、単純で壊れづらく修理しやすい車両が望ましいのです。修理に時間がかかると、その分の予備車両が必要となり、資産を増やさなければなりません。

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真岡鉄道のSL。2020年にはSL1両を東武鉄道に譲渡している(画像:PIXTA)。

 また、価格が安い中古車両を手に入れたいのですが、路線の条件に合う仕様の車両がタイミング良く出ることはなかなか無く、探し回ってご縁を見つけるのが実態です。それも難しくなると、多少合わなくても我慢するか、小改造などでしのぐことも多くなってきました。軽くて小さな車両の方が線路への負担は少ないのですが、やむなく輸送量に対して大きな車両を入れることもあります。

 究極の中古車両はSL(蒸気機関車)です。ほぼ全ての部品がメーカーから供給されないので、自社で作って交換するしかありません。このため、鉄部品を鋳造するコークス炉を備えたり、細密な機械加工をしたりと、車両メーカーレベルの設備・技術・要員が要求されます。SLを走らせるのは、運転も難しいですが、メンテナンスはさらに難しいのです。

修繕か新造か? 職人技が消える

 中古車両は購入価格が安いものの、腐食が進んでいて補修が必要なことがあるほか、交換部品の供給がいつまで続くかという問題も伴います。代替部品を合わせるなど工夫も必要ですし、歪みや腐食の修繕は技術を要します。雨漏りなど故障箇所の特定も簡単ではない場合もあります。

 こうした車両修繕は、新しく歪みの無い材料を組み立てる新造とは世界が異なります。昔は職人技で見事な修理をしていたものが、今はメンテナンスの人員もなかなか確保できず、人件費も上がり、改造費用の方が高くつくことも出てきました。

 では、いっそ車両を新造すれば良いかというと、これも難しいのです。

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