「米国初の超音速旅客機」キモのエンジンどうする? 「速いけど静かで燃費◯」…そんなコト可能なの!?

「ブーム」が開発を進めている「オーバーチュア」は、実用化されれば「コンコルド」以来の超音速旅客機出現となります。このキモと呼べるエンジンはどのようなものなのでしょうか。

現在のエンジンでは実現は無理ゲー?

 アメリカのスタートアップ企業「ブーム」が開発を進めている超音速旅客機「オーバーチュア」は、試験機「XB-1」が音速を突破したことにより、実用化への階段をひとつあがったと言えるでしょう。そこで、開発の進展に合わせて注目すべきポイントは「シンフォニー」(推力15.75t)と命名されたエンジンだと、筆者は考えています。

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「オーバーチュア」のイメージ(画像:ブーム・スーパーソニック)。

「オーバーチュア」は、2029年の実用化を目指しており、実現すれば英仏共同開発の「コンコルド」以来、そして米国初の超音速旅客機の出現となります。この機体は乗客数こそ約80人と少ないものの、予定している速度は現在のジェット旅客機より格段に速いマッハ1.7のほか、飛行高度は2倍近い約1万9000mです。

 こうしたことから、「オーバーチュア」には新しいエンジンが必要になります。

 旅客機のジェットエンジンは、現在は「ターボファン」と呼ばれるタイプが主流です。

 ターボファン・エンジンは、「コア」と呼ばれる圧縮機、空気と燃料を混合する燃焼器、高圧タービンで構成する中心部分の前に、ファンと呼ぶ大きな回転翼が付き、ここで推力を生んでいます。

 稼働中のターボファン・エンジンではコアから圧縮・燃焼された高温・高圧の空気、ファンからは圧縮されない空気と、2つの空気の流れが後方に向けて生じています。航空エンジンの分野では、この2種類の流れる空気量の差である「バイパス比」という指標があり、ファンからの空気量が多いほど高くなります。これはエンジンのスペックにおける、静音性と燃費の良さを示すバロメーターのひとつとなっているのです。

 一方で、バイパス比が高くなればなるほど、ファンからの空気量も多くしなければなりませんので、エンジンの直径は年を追うごとに太くなる傾向にあり、なかには、まるで樽のような太さをもつエンジンも生まれているほどです。

 しかし、より高い空を高速で飛ぶにはファンの直径を小さくするほか、「ターボジェット」と呼ばれる、ターボファンより先に登場したタイプが似つかわしいとされています。これは取り込んだ空気をすべてコアで圧縮・燃焼し高温・高圧の空気のみを排出することで推進力を得るもので、出力が高い分、騒音も大きく、燃費効率も悪いです。

 とはいえ、オーバーチュアが計画している速度と飛行高度は、既存の旅客機のエンジンを搭載していては達成できません。今の高バイパスのターボファン・エンジンとターボジェット・エンジンは性能を満たさないことから、ブームは新エンジン「シンフォニー」の開発に至ったといえるでしょう。

 では、このエンジンのスペックは、どのようなものなのでしょうか。

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