「米国初の超音速旅客機」キモのエンジンどうする? 「速いけど静かで燃費◯」…そんなコト可能なの!?
「ブーム」が開発を進めている「オーバーチュア」は、実用化されれば「コンコルド」以来の超音速旅客機出現となります。このキモと呼べるエンジンはどのようなものなのでしょうか。
「米国初の超音速旅客機」エンジンはどんなスペック?
ブームの公式サイトに掲載されているシンフォニーを見ると、バイパス比自体は具体的な数値は示されていないものの「中バイパス」を示すと見られる「ミディアム」とされ、エンジン前部にファンも見えます。

その一方で、コンコルドが商業的に成功しなかった原因といえる騒音を減らし、SAF(持続可能な航空燃料)を使い、二酸化炭素(CO2)も排出削減をしなければならないなど、超音速巡航飛行だけではない課題が幾つもあります。これらへの配慮から、「ミディアム」比のターボファンを選んだと推測されます。
ブームは「シンフォニー」の実現に向け、コア部分のプロトタイプの試験を2025年後半に行うとしています。試験場所については、2025年4月にコロラド州ワトキンスのコロラド航空宇宙港を選定したと発表しました。ここは以前、極超音速エンジンの開発に使われていたということですので、既存の施設を活用し効率化を図る狙いがあると見られます。同時にブームは、試験へ300万ドルから500万ドル(1米ドル150円として4億5000万円から7億5000万円)を投資するとしてもいえます。
このように「オーバーチュア」にとって、「シンフォニー」は唯一、打ち出したスペックを実現できる可能性をもったエンジンになります。それゆえ、このエンジンの実現なしでは、「オーバーチュア」の実用化は困難といえるでしょう。それだけに、「シンフォニー」の開発の進みように注目していきたいと思います。
Writer: 相良静造(航空ジャーナリスト)
さがら せいぞう。航空月刊誌を中心に、軍民を問わず航空関係の執筆を続ける。著書に、航空自衛隊の戦闘機選定の歴史を追った「F-Xの真実」(秀和システム)がある。
コメント