鉄道車両の連結器を「ぜんぶ取り換えろ」なんと7万両!? 100年前の一大プロジェクトはなぜ行われたのか?
今から100年前、鉄道の連結器の一斉交換が行われました。これにより、連結作業に携わる連結手の死傷事故が激減するなど、安全性が向上しました。今につながる鉄道従事者の安全の基礎を築いた一大プロジェクトを追います。
連結作業に危険を伴った昔の連結器
大量輸送を使命とする鉄道にとって、車両と車両をつなぐ連結器は欠かせません。現在、「自動連結器」が安価で頑丈な連結器として知られていますが、明治・大正時代の日本では「ねじ式連結器」が主流でした。

これを一斉に取り換えるという一大プロジェクトが行われてから、今年でちょうど100年になります。これは、今につながる鉄道従事者の安全の基礎を築いたといっても過言ではありません。
明治時代のねじ式連結器は、車両に付いているフックへ、もう一方の車両に付いている鎖状の金具を引っ掛ける仕組みです。鎖状の金具の中央にはねじ棒があり、長さを調節できます。「螺旋連結器」とも呼ばれました。また、同じような仕組みで鎖状の金具部分にねじ棒がない構造の「連環連結器」と組み合わせて、二重に連結されることもありました。
ねじ式連結器では、連結や切り離しの際に作業員が車両の間に入る必要があり、実に危険な作業でした。また、鎖状の金具は重さが約20kgもあり、これをフックに掛けたり外したりする作業は重労働だったのです。
当時の鉄道を管轄・運営していた鉄道省の調査によると、1924(大正13)年度に連結作業中の連結手が事故で3人亡くなり、206人が負傷したとされています。
また、連結・切り離しの作業が煩雑で、作業自体に多大な時間を費やしていたほか、連結器の修繕にも多大な費用がかかっていました。このような背景もあり、自動連結器への交換が計画されるに至ったのです。
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