列車の「非常通報ボタン」押すとどうなる? 実は120年で超進化 むやみに押してはいけない、もっともな理由

新幹線や都市部を走る列車には、車内に非常通報装置や非常通話装置が備え付けてあります。これらの装置のボタンを押すことで乗務員に危険な状況を知らせることができます。これらの装置はいつからあり、そのほかにどのような特徴があるのでしょうか。

非常通報装置を使うと、どうなる?

 非常通話装置が1990年代に広まったことで、通話機能のない非常通報装置を非常通話装置に取り替えた車両もありました。2010年代には客室に防犯カメラが付くようになり、利用者の多い都市圏の新型車両については2023年に設置が義務化されています。

 最新の車両では防犯カメラと非常通話装置が連動しています。2025年に登場した京成電鉄の新型車両3200形は、非常通話装置が使用された際に、近くにある防犯カメラの映像が乗務員室などに映し出される仕組みになっています。

 非常通報装置や非常通話装置が使われた場合、まずは列車を止めて状況を確認することになります。ただし、地下鉄は次の駅まで走るほか、トンネル内を走行している場合も同等の対応を取ります。これは列車火災の際、トンネル内で列車を止めてしまい、被害を拡大させてしまった事例があるためです。

 また、急行列車のように通過駅がある場合は、近くの駅などに止めて対応するのが基本です。京王電鉄では、ワンマン運転を見越した自動運転の試験を2025年から井の頭線で行っていますが、自動運転中に車内トラブルなどが発生した場合は乗務員の操作で近くの駅に停車させる「通過駅強制停車ボタン」を備えています。

「非常」の名前がある通り、非常通報装置や非常通話装置は非常時の備えとして用意されているものです。火災や暴力行為などの危険な状況はもちろん、痴漢などの犯罪行為や急病人が発生した際に使用することは問題ないのですが、いたずらに扱う設備ではない点も心がけておきたいところです。

【タイプいろいろ】これが列車内の「非常通報装置」です(写真)

Writer:

1974年東京都生まれ。大学の電気工学科を卒業後、信号機器メーカー、鉄道会社勤務等を経て、現在フリー。JR線の2度目の「乗りつぶし」に挑戦するも、九州南部を残して頓挫、飛行機の趣味は某ハイジャック事件からコクピットへの入室ができなくなり、挫折。現在は車両研究が主力で、技術・形態・運用・保守・転配・履歴等の研究を行う。鉄道雑誌への寄稿多数。資格は大型二種免許を取るも、一度もバスで路上を走った経験なし。

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