トランプ大統領またですか… 米軍が計画してない「老朽機の更新」やると明言! お金ドコから出すつもり?

老朽化し、まもなく退役予定のA-10攻撃機の一部を最新のF-15EX「イーグルII」戦闘機で更新するとトランプ大統領が明言しました。ただ、アメリカ空軍にはその計画も財源もないとか。具体的な基地名まで挙げているようです。

トランプ大統領「有言実行」するか?

 A-10Cは、1970年代に開発されたA-10A「サンダーボルトII」をアップグレードした対地攻撃専用の亜音速ジェット機です。その設計哲学の中心にあるのは「近接航空支援(CAS)」という概念で、これにより低空を飛び回り、地上部隊の要請によって精密誘導兵器を用いて火力支援を即座に行うことを主な任務としています。

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既存のF-15「イーグル」では無理な、計12発のミサイルを吊り下げて飛ぶF-15QA。F-15EX「イーグルII」のカタール向けのモデルだ(画像:ボーイング)。

 対するF-15EXは、経ち地攻撃も可能なものの多用途戦闘機という方がしっくりくる性格の軍用機です。むしろ高速・高高度での制空任務に加えて、精密誘導兵器による対地攻撃も可能というべきもので、A-10Cと比べて高度にデジタル化、ハイテク化が図られています。

 このように、A-10とF-15EXはかなり性格が異なりますが、ネットワークを中心とした近接航空支援はF-15EXでも可能なため、代替自体は可能でしょう。

 では、なぜトランプ大統領は前述したような発言をしたのでしょうか。手がかりのひとつが、昨今増額されたF-15EXの関連予算です。2025年度の国防予算案では、F-15EXの調達費が前年度比で約12%増加しています。公式には、これは老朽化するF-15C/Dの代替を加速するためとされていますが、同時にその増額分の一部が新たな追加調達に充てられる可能性も排除できません。

 また、今回の演説においてトランプ大統領は、特定の配備先として「セルフリッジ空軍基地」の名を挙げています。ここには2025年5月現在、21機のA-10Cが配備されており、これらが全て退役する予定なのは以前から知られていました。仮にF-15EXがこの21機の穴埋めとして導入されるのであれば、それは「A-10Cの後継」といえるものの、そのような流れは極めて限定的である可能性があります。

「大統領が発言した」以上、それが状況にそぐわないものであっても無視するわけにはいきません。アメリカの軍事政策はシビリアンコントロール、すなわち常に政治の影響下にあり、ときに合理性よりも政治的妥協が優先されることもあるためです。

 まずはトランプ大統領の言葉どおり、セルフリッジ空軍基地のA-10C攻撃機21機がF-15EXに置き換えられるのか、まずはその動きに注目です。

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Writer:

1981年生まれ。航空軍事記者、写真家。航空専門誌などにて活躍中であると同時に世界の航空事情を取材し、自身のウェブサイト「MASDF」(http://www.masdf.com/)でその成果を発表している。著書に『JASDF F-2』など10冊以上。

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