自動運転、普及のカギは販売現場に 試金石になる新型「セレナ」
「EyeSight」が好例 「販売の現場」にある自動運転技術、普及のカギ
これには理由があります。スバルは、販売の現場で、実際に使用するユーザーにシステムの内容をしっかり説明するよう徹底したというのです。一般の人は勘違いしていたかもしれませんが、スバルのユーザーは理解していたのです。それが勘違いによる事故を防いだ理由でしょう。
実際に、スバルが2010(平成22)年から2014(平成26)年に販売した車両を調べたところ、「EyeSight」を装着した車両は、非装着車よりも事故発生数が大幅に少なかったというのです。1万台あたりの事故件数は、なんと61%減。車両の追突事故に限れば、84%減少でした。「衝突被害軽減自動ブレーキ」の普及が、不幸な事故を減らしたのです。イメージのギャップを販売の現場でしっかり埋める努力が、勘違いの事故を減らし、システムの高い知名度による普及で、さらに事故を減らすという見事な結果を得たといえるでしょう。
そこで、このたび登場する日産の新型「セレナ」ですが、これはテスラ「モデルS」と違い普通の人が買える価格帯の、いわゆる大衆車です。発売が始まれば、街中をたくさんの「セレナ」が走り回ることでしょう。そこに「プロパイロット」のような高度な技術が投入されるのです。うまくいけば、他メーカーも競うように同様の技術を大衆車に搭載、自動運転技術の普及が大きく前進すると思われます。逆に「セレナ」で不幸な勘違いの事故が続出すれば、他メーカーは同技術の採用に慎重になるでしょう。普及にとっては“急ブレーキ”ですね。つまり日本における自動運転技術の普及は、「セレナ」にかかっており、まさに“試金石”なのです。
日産もその重要性は強く認識しているようで、2016年7月現在、全国のディーラー販売員に自動運転技術の教育を行っているとか。その成果が無事に発揮でき、「セレナ」で不幸な勘違い事故が起きないことを祈るばかりです。そして、自動運転技術の普及が進むことを期待したいと思います。
【了】
Writer: 鈴木ケンイチ(モータージャーナリスト)
日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。自動車専門誌やウェブ媒体にて新車レポートやエンジニア・インタビューなどを広く執筆。中国をはじめ、アジア各地のモーターショー取材を数多くこなしている。1966年生まれ。
>スバルは、販売の現場で、実際に使用するユーザーにシステムの内容をしっかり説明するよう徹底したというのです。一般の人は勘違いしていたかもしれませんが、スバルのユーザーは理解していたのです。それが勘違いによる事故を防いだ理由でしょう。
ということは、いわば「第1世代」の車が中古車市場に流れ始めた場合には、ユーザー教育の必要を知らない中古車販売店が幻想をもったユーザーに「自動運転車」を売るということになる。
もっとも、コンピューターを機械仕掛けの与太郎と考える者どもにとっては「もらい事故のリスク削減をどうするか」という昔からある危機管理の問題に集約されるのでどうでもよいことではある。
自動ブレーキは確実に事故を低減しましたが、自動運転は確実に事故を増やすでしょう。