「日本一かっこいい駅名」ってココ!? 本州最北私鉄の“秘境駅”に行った 何もない!けど確実に感じる“思い”
本州最北の私鉄・津軽鉄道は津軽五所川原駅を起点に、津軽半島の真ん中を北へと分け入る路線です。その途中には、無人の秘境駅が存在します。
鉄道林が駅のアクセントに
毘沙門村は1889(明治22)年の市町村制施行により嘉瀬村に併合されましたが、現在も字名として残っています。駅の開業時はすでに嘉瀬村内でしたが、地域にとっては旧村名の方がしっくりきたのでしょう。
なお、津鉄には旅行者から「毘沙門堂があるのか?」「毘沙門天を祀っている駅なのか?」と問い合わせがあるようですが、駅の周囲には毘沙門天にまつわる場所はありません。
ところで、「日本一かっこいい駅名」というのは、gooランキングの「かっこいい駅名ランキング」で、毘沙門駅は2022年に第1位へ選ばれました。このランキングから毘沙門駅の存在を知って訪れる旅人もいて、津鉄もアテンダントの車内放送でアピールしています。
さて、ホームを見てみましょう。片面ホームの背後には「鉄道林」と記された説明看板が立っています。津軽地方は地吹雪が名物ですが、鉄道にとっては定時運行を妨げかねない厄介な自然現象です。そこで地吹雪や強風から津鉄を守ろうと、職員の手によって1956(昭和31)年に木々が植樹されました。
植樹前は雑木林が次々と伐採された状態で、強風から列車を遮るものがなく、毘沙門駅は冬場になると吹き溜まりとなっていました。鉄道林が植樹されて成長し、林の中のように茂ることで、駅は地吹雪と強風から守られ、結果的にその姿が秘境駅の雰囲気を醸し出すようになってきました。
鉄道林は近年人不足などによって整備されておらず、枝葉が伸び、鬱蒼としていました。そこで10年ほど前から森林ボランティアと津鉄の職員が間伐作業を実施し、整備してきました。しかし津鉄によると、直近は森林ボランティアの高齢化やコロナ禍による活動自粛など、活動が厳しい状況となっているのが実情です。
鬱蒼とする鉄道林にポツンとある片側ホーム。そこに一際目立つのは、観光施設のような立派な待合室です。待合室はきれいに整い、決して寂れているようには感じられず、中に入れば木材の香りに包まれ、心が安らいでいく感覚となります。
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