「日本一かっこいい駅名」ってココ!? 本州最北私鉄の“秘境駅”に行った 何もない!けど確実に感じる“思い”

本州最北の私鉄・津軽鉄道は津軽五所川原駅を起点に、津軽半島の真ん中を北へと分け入る路線です。その途中には、無人の秘境駅が存在します。

「地産地消」の待合室も見どころ

 無人駅の待合室といっても簡素なものではなく、室内は梁に欄間や竹編みの意匠が施され、秘境駅にいることを忘れてしまうほど大層立派な造りです。さらに、五所川原の立佞武多(たちねぷた)も掲げられていますが、これは毘沙門天のお面とのことです。

 お面は、ねぷたを趣味で作っている人が、かっこいい駅名ランキングで毘沙門駅が1位になったニュースを偶然見ていたときに、ちょうど毘沙門天を製作していたことから寄贈したものだといいます。待合室に一歩踏み入れると、津軽地方にいることを再確認させてくれます。

 この立派な待合室は何十年も前からあったのではなく、以前は小屋のような待合室がくたびれた状態で佇んでいました。そこで地元会社の手助けによって建て替えられ、2013年6月に竣工。建材は地元産のヒバなどの木材をふんだんに使用し、建築後10年以上経過した現在でも、ほのかな木の香りがしています。ちなみに竣工時の式典では獅子舞が舞い、来場者へ鍋もふるまわれ、駅開業以来の賑やかさではと思われるほどだったそうです。

 津軽地方はかつて林業が盛んであり、ヒバの産地でした。ヒバを輸送するため、津軽森林鉄道の路線が至る所に延びていたほどです。毘沙門駅はいわば地産地消の建材で成り立っているのですね。

 秘境駅探索で列車を降り、次の列車が来るまでのしばらくの間、待合室で木の香りに安らぎを覚え、鉄道林の成長ぶりを観察するのも良いでしょう。駅は、いつ来るか分からない利用者のために、定期的に掃除してくれる地元の人がおり、待合室もきれいに保たれています。

 列車が来ない間、隣のグループホームの生活音が時々する以外は、鉄道林の枝葉が風で揺れ、ほとんど自然界の奏でる音に包まれます。人がいないときは小動物の動きが活発となり、冬場は積もった雪に小さな足跡も多くなります。

 津鉄は太宰治の斜陽館やストーブ列車が有名ですが、自然が奏でる音と木の香りに包まれながら、秘境駅でしばらく安らぐのも良いかもしれません。

【しん…】静まり返った「秘境駅」と、その待合室の中を見る(写真)

Writer:

1977年、東京都生まれ。大阪芸術大学写真学科卒業後、建築模型製作会社スタッフを経て空撮会社へ。フリーランスとして空撮のキャリアを積む。10数年前から長年の憧れであった鉄道空撮に取り組み、2011年の初個展「空鉄(そらてつ)」を皮切りに、個展や書籍などで数々の空撮鉄道写真を発表。「空鉄」で注目を集め、鉄道空撮はライフワークとしている。空撮はもとより旅や鉄道などの紀行取材も行い、陸空で活躍。日本写真家協会(JPS)正会員、日本鉄道写真作家協会(JRPS)会員。

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