「皿回らないやつ」もやめる 米軍の方向転換で自衛隊の早期警戒機どうなる? もう一つの「2035年問題」となる可能性
自衛隊は「次期戦闘機」が完成するとみられる2035年頃までに、解決すべきもう一つの問題を抱えています。それは早期警戒管制機の更新。現代の防空に不可欠な装備ですが、存在自体が曲がり角に差し掛かっているかもしれません。
アメリカは「皿を回さない新型」で更新…しないかも?
現代の軍用機は運用寿命が概ね30年程度に設定されていますが、アメリカ空軍は多くの機体が、運用開始から15年を経過したあたりから、維持運用コストが毎年3%から7%程度、上昇しているとの統計を発表しています。もちろん、これはアメリカ空軍に限った話ではありません。

1999年の運用開始から現在まで、E-767の維持運用コストが毎年どの程度上昇しているのかは、航空自衛隊が明らかにしていないのでわかりませんが、先日筆者はE-767の1飛行時間あたりの運用コストがほぼ1億円に達しているという話を耳にしました。現在の日本にとってこの金額は小さなものではありません。防衛省・航空自衛隊もそこは承知しているからこそ、2035年を目標にE-767への更新を考えているのでしょう。
前にも述べたようにアメリカ空軍はE-3の後継機を模索しており、2022年に一部のE-3をオーストラリア空軍などが運用している早期警戒管制機E-7「ウェッジテイル」で更新することを決定していました。この機体は、円形のレーダーであるレドームに代わり、板状のレーダー・アンテナを装備しているのが外観上の大きな違いです。
しかし、ここに来てアメリカ国防総省は、政府の方針に則って、E-7の導入をキャンセルする方向に進んでいます。
ピート・ヘグセス国防長官は2025年5月に、E-7では現代の戦場において生存が困難なため、人工衛星などを活用する宇宙ベースの空中移動目標の認識能力(AMTI)を拡充し、その能力が充実するまでは、航空自衛隊も運用しているE-2D早期警戒機でカバーしていくべきだと述べています。
日本、イギリス、イタリアの「GCAP」や、フランス、ドイツ、スペインの「FCAS/SCAF」といった2030年代以降に実用化される戦闘機には、人工衛星と直接情報を送受信できる通信システムの装備が計画されており、おそらくアメリカ空軍のF-47や海軍で計画中のF/A₋XXなども、そのような能力を持つ戦闘機になると考えられます。
またアメリカだけでなく、NATO(北大西洋条約機構)も、人工衛星を活用する「AFSC」(Alliance Future Surveillance and Control/将来同盟監視制御)という名称のシステムの検討を開始しており、GCAPのような軍用機やAFSCのようなシステムの整備が進めば、早期軽管制機の価値は相対的に低下すると予想されます。
誤:今後E-3の能力向上改修は行われない可能性は無い
正:今後E-3の能力向上改修は行われる可能性は無い
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