デザイン良し! 運転性も優秀だった「天才タマゴ」のミニバンなぜ消えた? 特異なエンジン配置がもたらした功罪
革新的なミッドシップレイアウトを持つミニバンとして生まれた初代「エスティマ」は、人気を博したにも関わらず、その特徴的なメカニズムは2代目、3代目に受け継がれることはありませんでした。それは一体なぜだったのでしょうか。
パワー不足のほかにもデメリットが
また、ミッドシップレイアウトを採用する初代「エスティマ」には、エンジンを床下に収納するというパッケージ上の制約から、低床化できないという問題を抱えていました。そのため、後部座席に乗り込む際にはスライドドアを開けてからステップを上がらなければならず、女性や子ども、高齢者からは不満の声が挙がっていたのです。

その一方で、初代「エスティマ」はパワートレインを床下に収めたことでフロア剛性が高く、床からの不快な振動がなく、また、2列目シートを1段高くしたことで、見晴らしが良いなど、ミッドシップレイアウトを採用したからこそのメリットもありました。この点は2代目・3代目「エスティマ」より明らかに優れていた点でしょう。
「エスティマ」は2020年に3代目が生産終了したことで、いうなれば休眠ブランドと化しています。しかし、優れた長所をいくつも持つ初代「エスティマ」のコンセプトをこのまま歴史に埋没させるのは、あまりにももったいないハナシです。
筆者(山崎 龍:乗り物系ライター)の希望で言えば、仮にこのクルマを復活させるとしたら、「86」&「BRZ」の開発で協業したスバルと再びタッグを組み、水平対抗エンジンを搭載したミッドシップレイアウトの「エスティマ」を開発してもらいたいところです。
初代で指摘されたパワー不足の問題は、トヨタが得意とするハイブリッドシステムを搭載することである程度解消できるでしょうし、もちろん燃費性能も期待できるでしょう。
こうすれば、走りが良く、運転が楽しく、快適で乗り心地にも優れ、多人数乗車も可能なマルチ・パーパス・ヴィークルが生まれると考えます。今のミニバンに飽きたらないユーザー、とくに家族持ちのクルマ好きには初代「エスティマ」のコンセプトを引き継ぐミッドシップレイアウトのミニバンは、きっと心に刺さると思うのです。
Writer: 山崎 龍(乗り物系ライター)
「自動車やクルマを中心にした乗り物系ライター。愛車は1967年型アルファロメオ1300GTジュニア、2010年型フィアット500PINK!、モト・グッツィV11スポーツ、ヤマハ・グランドマジェスティ250、スズキGN125H、ホンダ・スーパーカブ110「天気の子」。著書は「萌えだらけの車選び」「最強! 連合艦隊オールスターズ」「『世界の銃』完全読本」ほか」に
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