日本の「対艦番長」F-2導入検討――フィリピン本気? 能力的にはバッチリだけど“現実的とは全く思えない”ワケ
フィリピン空軍が航空自衛隊のF-2戦闘機を将来取得する戦闘機候補として検討していることを明かしました。フィリピンが置かれた状況に対し、F-2は能力的にも合致するかもしれません。ただし輸出の実現は難しそうです。
アメリカへの当てつけ説も?
フィリピンはアメリカからF-16戦闘機の最新型、F-16Vを20機購入する方針で、アメリカ政府も2025年4月にF-16Vの売却を承認しています。

このアメリカ政府が承認したF-16Vの輸出パッケージには対艦ミサイルは含まれておらず、F-16Vの購入はCADC構想を実現するというよりは、防空能力を強化するためと思われます。ただ、導入コストは55億8000万ドル(おおよそ8084億円)に達しており、このコスト負担はフィリピン政府にとって軽いものではありません。
フィリピン政府は中東情勢やアメリカの貿易政策の変化などによって不確実性が増したことから、6月26日に、2025年の経済成長目標を年初の6.0~8.0%から5.5~6.0%へ下方修正すると発表しています。経済成長率の鈍化は税収の減少に直結しますので、フィリピン政府の見立て通りに経済成長率が鈍化すれば、フィリピン政府にとってのF-16Vの導入コスト負担は、さらに重いものになります。
アメリカ政府は世界各国に対して大きな関税をかける方針を示していますが、フィリピンのホセマヌエル・ロムアルデス駐米大使は4月10日に、トランプ政権が当初の発表通り関税の税率を引き上げればフィリピン経済は悪化し、F-16Vの調達に支障が生じるとの懸念を示しています。
「F-2いいじゃん!」←かなり難しいです
航空自衛隊のF-2は2035年の退役開始が予定されています。退役したF-2を購入するのであれば、F-16Vや他の新造戦闘機の購入よりコスト負担は小さいでしょうから、フィリピン空軍はその点も考慮に入れてF-2の導入を考えているのかもしれません。
しかしF-2を輸出して長期に渡って運用することは、簡単ではありません。
中国の力による現状変更を是認しないフィリピンへの防衛装備品の輸出は、日本にとっても得るところが大きいのですが、現状の防衛装備移転三原則では、戦闘機は輸出可能な品目に含まれておらず、三原則を大幅に改定する必要が生じます。
仮に2035年以降、三原則の改定によってF-2のフィリピンへの輸出が可能になったとしても、「いつまで第一線で使えるのかはっきりわからない中古機」を引き渡すことになります。
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