「お召列車」なぜ廃止? 老朽化だけではない、日本と異なる英国王室の事情 150年以上の歴史に幕

英国王室が王室専用列車、いわゆる「お召列車」を廃止する意向を示しました。150年以上の歴史を持つ王室専用車両は、どのように生まれ、そしてどのような経緯と背景で消えていくのでしょうか。

「国民の反感」も廃止を後押し?

 次に、王室の金銭スキャンダルから目を背けさせたいという思惑も背景にありそうです。王室が所有している不動産を慈善団体などに貸して利益を得ていたことなどが露呈し、国民の反感を買っているのです。

 最後に、王室専用車両は、その時々の英国君主の好みや時代を反映して、新調または改造されてきたことがあります。

 金銭問題や過去の女性問題などであまり人気があるとはいえないチャールズ国王ですが、意外にも、1970年、21歳の時には川や海に投棄されたプラスチック廃棄物や、大気汚染の脅威について演説し、早すぎる預言者として世間を唖然とさせたほど、熱心な環境家として著名な側面があります。

 即位してからは、公用車のベントレーをバイオ燃料に対応させたり、ヘリコプターを持続可能な航空燃料(SAF)を50%使用するモデルに買い替えたり、王室の二酸化炭素排出量の削減に努めています。

 現在のお召列車は、使用済みの植物油(廃食油)を原料としたバイオディーゼル燃料で走るディーゼル機関車が牽引(けんいん)しています。環境に配慮した機関車ですが、二酸化炭素を排出しないわけではありません。こうしたお召列車の廃止は、現君主の「環境配慮」という好みに合わせた新しい移動手段の時代が始まったことを物語っているのかもしれません。

 奇しくも、欧州では環境意識の高まりから、鉄道、中でも寝台列車が見直されています。お召列車は廃止になりますが、今後も民間鉄道サービスは利用するとチャールズ国王は表明しています。「英王室が公務で移動する際に、どれだけの二酸化炭素を排出したのか」という統計が毎年公表されますが、今後、王室の二酸化炭素排出量がどれだけ減るのか、注目したいところです。

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