「お、いいきっぷが出たな」 昭和の青春18きっぷ&周遊券“使い倒し旅”のリアル 私はこうして“ビンボー乗り鉄”にハマった
国鉄時代に登場した「周遊券」と「青春18きっぷ」は、若者たちの旅のスタイルを一変させました。1980年代に青春時代を過ごした“昭和ジジイ”の筆者が、かつての旅を振り返ります。
「青春18きっぷ」に続く新しいきっぷを
長野県の大学に進学すると、鉄道よりもクルマと峠ドライブに興味が移りました。さらに東京で就職して数年間は仕事がおもしろくて、「青春18きっぷ」の旅から遠ざかります。その間、国鉄はJRに変わり、周遊券も「周遊きっぷ」に名前を変えます。
しばらくして乗り鉄を再開しても、「青春18きっぷ」を使う機会は以前より減りました。フリーきっぷの種類が増えたからです。
例えばJR四国ではバリーエーション豊かなフリーきっぷを取りそろえ、うれしいことに特急指定席やグリーン車に乗れるタイプもありました。「北陸フリーきっぷ」(2006?2013年)やJR九州の「HAPPY BIRTHDAY♪KYUSHU PASS」(2015年)など魅力的な企画もありましたが、今は販売されていません。近年はフリーきっぷの見直しが進んで整理されつつあるようです。そうなると、全国の駅で乗り降り自由な「青春18きっぷ」の存在は、ますます貴重になるでしょう。
年齢を重ねるうちに、「青春18きっぷ」の使い方も変わりました。遠くを目指す旅から、フリーきっぷが設定されていないエリアを目指す際に使い、飛行機や新幹線の利用を組み込んだ旅も増えました。例えばLCC(格安航空会社)で新千歳へ飛び、滝川から釧路まで、日本一運行時間が長い普通列車「2429D」(現在は廃止)に乗り、釧路からLCCで帰る旅です。各駅停車の列車旅が目的ですから、「青春18きっぷ」がピッタリです。
「青春18きっぷ」は、「夏休みの学生のように、お金はなくても時間はたっぷりある」人に最適なきっぷです。大人になると学生時代より金銭的な余裕があっても、長旅をする時間がとれず、「青春18きっぷ」やかつての周遊券があっても、高校生の頃のような旅はできなくなります。
とはいえ、乗り鉄をやめたわけではありません。例えばJR東日本の「旅せよ平日!JR東日本たびキュン?早割パス」(通称・キュン?パス)は、とても魅力的です。平日限定ながらJR東日本管内乗り放題で、新幹線を含む特急列車も利用でき(回数制限あり)、「特に行きたいところはないけれど、列車で旅をしたい」と思ったときに最適です。このきっぷが旅のきっかけになることもありました。
今の若い人には、ぜひ「青春18きっぷ」で旅をしてほしいと願う一方で、昭和のオジサンにはあの頃の旅は難しくなりました。「青春18きっぷ」を卒業した世代に向けた、新しいきっぷがあったらいいな、としみじみ思っています。
Writer: 杉山淳一(鉄道ライター)
乗り鉄。書き鉄。ゲーム鉄。某出版社でゲーム雑誌の広告営業職を経て独立。PCカタログ制作、PC関連雑誌デスクを経験したのち、ネットメディアなどで鉄道関係のニュース、コラムを執筆。国内の鉄道路線踏破率は93パーセント。著書に『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。日本全国列車旅、達人のとっておき33選』(幻冬舎刊)など。
70年代に学生だった私には、均一周遊券とユースホステルが旅の定番でしたが、ワイド周遊券やミニ周遊券の旅も経験した世代として、懐かしく読ませていただきました。