是が非でも性能アップだ!「心臓」変えて名機になった日独の戦闘機たち

戦闘機の性能向上を図る際によく見られるのが、新型エンジンへの換装です。そのようななか、第2次世界大戦では空冷エンジンと液冷エンジンという全く異なる形状で付け替えた日独の戦闘機を紹介します。

「首なし飛燕」を転用して誕生した戦闘機

 とはいえ、ハ40が快調に動いてくれれば「飛燕」は優秀でした。そのため日本陸軍はハ40の性能向上型であるハ140の開発を進め、これを搭載した三式戦闘機二型の生産に踏み切ります。

Large 20250712 01

拡大画像

アメリカ空軍博物館に収蔵・保管されているFw 190D型。こちらは液冷エンジン搭載(画像:アメリカ空軍博物館)。

 確かに三式戦闘機二型は、ハ140さえ快調ならハ40搭載型よりも高い性能を発揮します。ところがハ40の生産すら満足に行えないのに、ハ140が生産できるはずがありません。結局、このエンジンも生産遅延が著しく、不良品が続出する事態となりました。

 このため、エンジン未装備の三式戦闘機二型の胴体だけが多数放置されることになったのです。それならと、これら「首無し飛燕」に、空冷エンジンを組み合わせることが企図されます。

 選ばれたのは、三菱重工業製のハ112II空冷星型エンジンでした。液冷のDB601に比べて前面投影面積がはるかに大きなハ112IIなので、胴体を整形する必要がありましたが、飛行機としての素性は優れていたため、ハ112IIとは比較的すんなりとマッチングしています。

 こうして、エンジン信頼性の低い優秀機「飛燕」は、エンジン信頼性の高い優秀機「五式戦闘機」へと生まれ変わりました。実戦では、アメリカの優秀機ノースアメリカンP-51「マスタング」やヴォートF4U「コルセア」を相手に互角の戦いぶりを示し、苦戦続きの大戦末期にもかかわらず敵味方の双方から高評価を受けたのです。

 空冷から液冷にエンジンを換装したフォッケウルフFw190D。その逆で液冷から空冷に替えた五式戦闘機。両者とも本来想定されていたエンジンの変更、すなわち航空機にとっての「心臓移植」を施した結果、見事に性能向上をはたした機体として、歴史に名を留めています。

【画像】これが世界で唯一、現存する五式戦闘機です

Writer:

東京・御茶ノ水生まれ。陸・海・空すべての兵器や戦史を研究しており『PANZER』、『世界の艦船』、『ミリタリークラシックス』、『歴史群像』など軍事雑誌各誌の定期連載を持つほか著書多数。また各種軍事関連映画の公式プログラムへの執筆も数多く手掛ける。『第二次世界大戦映画DVDコレクション』総監修者。かつて観賞魚雑誌編集長や観賞魚専門学院校長も務め、その方面の著書も多数。

最新記事

コメント