車窓が特殊すぎる!? 私鉄の「殺風景を楽しむ電車」とは? 終点もちょっとヘン!

全長が10kmに満たない鉄道路線で、「夜に電車で行き来する」という企画が10年超も続いてきました。ロングランの人気を探ろうと乗り込むと、首をかしげる光景の駅に行き着きました。

トイレットペーパーの半分は「ここら辺で作ってます」

 出発した電車の左側には、重要港湾に指定されている田子の浦港があります。この港に製紙工場で使う外国産の木材チップや、燃料の石炭などが船舶で運び込まれています。電車が内陸部へと曲がると、ジェネリック医薬品(後発薬)を製造している日医工静岡工場が出てきました。

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岳南電車の始発、吉原駅の駅舎(大塚圭一郎撮影)

 最初の停車駅は、その名もズバリのジヤトコ前。日産自動車系の自動車部品メーカー、ジヤトコの富士第一地区の工場前にあります。藤咲さんは「ジヤトコはジャパン・オートマティック・トランスミッション・コーポレーションの頭文字から命名されており、クルマのトランスミッション(変速機)のCVT(無段変速機)などを造っている工場です」と説明しました。

 ジヤトコ前の2駅先の本吉原は、四角すい状に加工された石を積み上げて造ったホームと、ホーム上の屋根を支えるための丸みを帯びた支柱が国の登録有形文化財に登録されています。

 駅の近くには、「芯なし5倍巻きトイレットペーパー」を国内で初めて売り出した丸富製紙といった製紙工場が照明で浮かび上がっていました。藤咲さんが「トイレットペーパーの製造場所の表記を見ていただくと、ほぼ2分の1の確率で静岡県富士市なので、帰宅後にご確認ください」とアピールした通り、富士市は国内屈指の「紙のまち」です。

「貨物終了」で窮地に

 岳南電車もかつては製紙工場と結ぶ貨物列車が走り、工場で使う原材料や、完成した製品を運んでいました。

 しかし、2012年3月に貨物列車の運行は終了。「夜景電車」に同行したボランティア団体「フジパク」の鈴木秀実さんは理由を「紙の出荷量が減ったこともあって貨物列車より大型トラックで運んだ方が効率的になったためです」とし、「大型トラックならば帰りに(再生紙の原料となる)古紙を積んで来られるのも好都合でした」と解説しました。

 当時鉄道を運行していた岳南鉄道は、会社の屋台骨を支えていた貨物列車の運輸収入を失って経営危機に陥りました。事業再構築策として2013年4月に鉄道を分社化して「岳南電車」となり、富士市の補助金を受けて存続することになりました。一方で少子高齢化が進む中、利用促進策も急務となりました。

 一筋の光明となったのが、2014年の夜景観光コンベンション・ビューローの「日本夜景遺産」への認定です。殺風景だと受け止める向きさえあった工場の並ぶ沿線風景が景勝地へと一変し、観賞用の「夜景電車」は観光客を呼び込む舞台装置としてすっかり軌道に乗りました。

【キレイな風景ありません…】これが「殺風景を楽しむ電車」です!(写真)

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