「一般人お断り」だった「すぐ帰らされる」激レア終着駅、いったい何がある!? 日本唯一「“猫”がつく駅」に行ってみた

災害のため一部区間の運休が続く黒部峡谷鉄道。現在の終点は、もともと「一般人お断り」だった駅で、なおかつ駅名に「猫」がつく日本唯一の存在でもあります。行ってみると、災害による被害の大きさを実感しました。

何もないけど「日本唯一」そして「今だけ」

 日本で唯一「猫」が付く駅名の猫又は、ネコに追われたネズミが駅近くにある高さ約200mの「ねずみ返しの岩壁」を登れず、追ってきた「猫も又」引き返したのが由来という説があります。

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黒部峡谷鉄道の猫又駅で待機する折り返し列車(大塚圭一郎撮影)

 駅前には観光案内所のテントが開設され、筆者は猫又―欅平間の状況を尋ねました。職員は「(2024年1月の)能登半島地震で猫又―鐘釣間にある崖から落石があり、黒部峡谷鉄道の鐘釣橋に当たって損傷した。復旧まで時間がかかるため、猫又で一般客も降りられるようにして折り返し運転を始めた」と説明してくれました。

 黒部峡谷鉄道の部分運休は、富山県の主力産業の一つとなっている観光業にも打撃を与えています。終点の欅平駅と黒部ダムの間では全長約18kmの新観光ルート「黒部宇奈月キャニオンルート」が2024年6月末から一般開放される予定でしたが、観光関係者は「黒部峡谷鉄道の全線復旧は早くても2026年秋になると聞いており、キャニオンルートの一般開放開始もおそらく同じタイミングになる」と解説します。

 キャニオンルートの一般開放が始まると、世界有数の山岳観光ルート「立山黒部アルペンルート」への新たなアクセスとして利便性が高まるとともに、観光客拡大の起爆剤になると期待されています。

 関西電力などが水力発電所「黒部川第4発電所」を建設するために工事用ルートとして整備されたキャニオンルートは、蓄電池機関車がひく列車や、急傾斜を昇降するインクラインなどに乗ることができ「立山黒部アルペンルートにも負けないほどの魅力と迫力がある」(試乗した旅行会社社員)とも。

 観光関係者は、黒部峡谷鉄道の全線復旧とキャニオンルートの一般開放開始時には「猫又駅の旅客扱いは終了し、一般客は再び乗降できなくなる」と断言します。駅前に設けた展望台から黒部川が蛇行する様子を眺めたり、駅名に由来するネコのフォトスポットで撮影したり、ホームを歩いたりできるのも全てが「今だけよ」の期間限定なのです。

【どこ?】これが日本唯一「“猫”のつく駅」です(地図/写真)

Writer:

1973年、東京都生まれ。97年に国立東京外国語大学フランス語学科卒、共同通信社に入社。ニューヨーク支局特派員、ワシントン支局次長を歴任し、アメリカに通算10年間住んだ。「乗りもの」ならば国内外のあらゆるものに関心を持つ。VIA鉄道カナダの愛好家団体「VIAクラブ日本支部」会員。

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