「最も暑い地下鉄」なぜそんなに暑い? しかも“ロックコンサート並みの爆音” 「涼しい英国」は終わった
「いつも天気が悪く涼しい英国」は、もう過去のイメージかもしれません。特にロンドンの地下鉄ビクトリア線は、まるで蒸し風呂。どのようにして、この「最も暑い地下鉄」として悪名高い路線が生まれたのでしょうか。
ロックコンサートを超える騒音レベルの摩擦
また、ビクトリア線は、車輪とレールがこすれる際の「きしみ音」がひどいことでも悪名高い路線です。走行速度が速い分だけレールが傷みやすく、その上を走ると摩擦が大きくなって騒音が生じます。
2010年代から取りざたされ始めたビクトリア線の騒音問題。耳鼻科医などによって耳栓やノイズキャンセリングイヤホンの使用が推奨されるなど、鼓膜に支障をきたすほどのきしみ音です。2024年にはロックコンサートの騒音(110デシベル)を上回る112.3デシベルを記録し、同年には、こうしたビクトリア線の騒音にさらされ続けていることに抗議する運転士たちが、騒音が発生する区間に来るとブレーキをかけて速度を落とすことを宣言しました。
ブレーキをかけることによりレールの劣化がさらに進み、また、減速分の遅れを取り戻すために、それ以外の区間で加速し、さらにレールが劣化する――。そんな悪循環に陥っているといいます(BBCによる)。当然、そのすべての局面で、車輪とレールの摩擦熱で温度が上昇していることが予想されます。
もちろん、ロンドン交通局もブレーキによる発熱を抑える回生ブレーキを導入したり、レール表面を定期的に研磨したりと、摩擦熱が発生しにくいように対策は取っているようです。
また、発生してしまった熱をトンネル外に排出する設備や、冷気を送り込むシステム、地下水を利用して空気を冷却する仕組みなど、温度を下げるための技術的努力も取られていますが、結果が出ていません。
ビクトリア線は、未だにクーラーの計画もまったくの白紙状態で、暑さ対策から完全に取り残されている状況です。
この夏、ロンドンを訪れ、ビクトリア線に乗る際には、手持ちの扇風機にノイズキャンセリングイヤホンが必須のようです。
Writer: 赤川薫(アーティスト・鉄道ジャーナリスト)
アーティストとして米CNN、英The Guardian、独Deutsche Welle、英BBC Radioなどで紹介・掲載される一方、鉄道ジャーナリストとして日本のみならず英国の鉄道雑誌にも執筆。欧州各国、特に英国の鉄道界に広い人脈を持つ。慶応義塾大学文学部卒業後、ロンドン大学SOAS修士号。
銀座線も昔は「車両に冷房を付けても、排熱でトンネル内や駅内が暑くなる」と言う事で、トンネル内の柱と柱の間に大型クーラーを設置して、電車は窓を開けて走ってたよ。大型クーラーの横を通る時だけ、窓から一瞬冷気が吹き込んで来た。
空気との摩擦で暑くなるほどの高速走行とは思えない。もしそうなら、扇風機の羽根はとても熱くなります。電車ご場合、モーターとブレーキ(・抵抗器)が主な熱源です。
建設費を節約する為に、トンネルの天井を低くしたツケだ。
因みに大阪メトロ御堂筋線は計画段階でハイブリッドカーを導入する予定だった為、パンタグラフ取り付けに備え、トンネルの天井を高くした事が後の冷房化導入の際に役立った。