キワモノ過ぎたSUV「オシャレじゃない! 荷物載らない! 力もない!」ただ珍車すぎて価格高騰って本当?

「アルト」や「ワゴンR」など、大ヒットを飛ばす傑作車を生みだした自動車会社のスズキが販売していた激レア車が「X-90」です。ユーザーも使い方が想像できなかった珍車は、なぜ登場したのでしょうか。

商業的には大失敗! でも再評価の機運も

 なぜ、このようなクルマが販売されたかと言えば、それは多くのユーザーが発売を望んだからです。もともと「X-90」は、1993年に開催された『第30回東京モーターショー』のためのコンセプトカーとして製作されました。

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スズキ「X-90」の日本仕様。同車は1995年10月から1999年1月までの3年半の間に国内市場では1348台が販売された。

 出展時は市販化の予定はなかったものの、発表されると「デザインがかわいい」「ユニークで個性的」「ぜひ市販化してほしい」との声が多数寄せられたことから、当時のRVブームを追い風としてスズキは発売に踏み切ります。

 ところが、いざリリースしてみると136~149万8000円という、SUVにしては比較的リーズナブルな新車価格だったにも関わらず、販売はまるで振るいませんでした。スズキは海外市場に活路を求めて北米や欧州、オーストラリアにも輸出しましたが、コンセプトのユニークさこそ評価されたものの、実売には結びつきませんでした。

 結局、3年3か月の販売期間中に生産された「X-90」の台数は、国内向けが1348台、海外市場を合わせても総計1万2000台に満たない数で、商業的には大失敗に終わったのです。スズキは市場からの熱烈なラブコールを受けて発売したのに、ユーザーの無責任な「買う買う詐欺」に騙され、開発費すらロクに回収できないほどの商業的な失敗を被ったと言えるでしょう。

 しかし、そのような「X-90」にも根強いファンがつくところが、スズキ車たるゆえんです。熱狂的な「鈴菌感染者」が現在でも大切に所有しているケースが少なくないようです。

 ちなみに、かつては「30万円でもいらん」と言われていた「X-90」ですが、近年その希少性とユニークな個性が再評価されて、中古車相場は高騰しており、高い車両になると300万円を超えることもある模様です。

【画像】記憶にある? これが「X-90」のリアビューだ! 内装も

Writer:

「自動車やクルマを中心にした乗り物系ライター。愛車は1967年型アルファロメオ1300GTジュニア、2010年型フィアット500PINK!、モト・グッツィV11スポーツ、ヤマハ・グランドマジェスティ250、スズキGN125H、ホンダ・スーパーカブ110「天気の子」。著書は「萌えだらけの車選び」「最強! 連合艦隊オールスターズ」「『世界の銃』完全読本」ほか」に

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