「8時ちょうどのあずさ2号」は現存する? あのヒット曲から約40年

狩人のヒット曲『あずさ2号』。そのなかで歌われた「8時ちょうどのあずさ2号」は現在、どうなっているのでしょうか。またかつて、「あずさ2号」が2本存在していたこともありました。

行先が2か所あった「あずさ2号」

 兄弟デュオ「狩人」のヒット曲『あずさ2号』。「8時ちょうどのあずさ2号で」というフレーズが有名ですが、実は楽曲が発表された1977(昭和52)年当時、午前8時ちょうどに出発する特急「あずさ2号」は2本存在していました。

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1966年に運転を開始し、今年2016年でちょうど50周年を迎える特急「あずさ」(写真出典:photolibrary)。

「あずさ」は中央本線を経由しおもに新宿〜松本間を結ぶ特急列車で、その名前は長野県松本市内を流れる梓川(あずさがわ)に由来します。当時の特急「あずさ2号」は、1本は新宿駅を、もう1本は松本駅をいずれも午前8時00分に出発。上り下り各1本、計2本の「あずさ2号」があったのです。

 ただ「春まだ浅い信濃路へ」という歌詞から、歌われている列車は「信濃路へ」向かう列車、つまり新宿発松本行きの下り「あずさ2号」と推定できます。

歌からわずか1年半で消滅していた「8時ちょうどの『あずさ2号』」

 ところがその下り「あずさ2号」は1978(昭和53)年、楽曲発表からわずか1年半後になくなってしまいます。

 それまで下り列車、上り列車それぞれに1号、2号、3号……と振られていた号数が、1978年10月2日に実施されたダイヤ改正で、現在のように下りが奇数(1号、3号、5号……)、上りが偶数(2号、4号、6号……)という形に変更されたため、つまり「あずさ2号」は上り列車だけになってしまったためです。

 このルール変更について『時刻表』1978年10月号(日本国有鉄道監修、日本交通公社刊)では、「たとえば『あずさ2号』といえば甲府から新宿へ向かう上り列車で、松本方面へ向かう列車は、1号、3号、5号と奇数番号がつくことになります」と説明。当時、下り「あずさ2号」の認知度がいかに高かったかをうかがわせます。

8時ちょうどの「あずさ」はいま、「スーパー」に

 午前8時ちょうどに新宿駅を出発していた「あずさ2号」はその後、どのような変遷をたどったのでしょうか。

 新宿駅から信濃路へ、午前8時ちょうどに出発する「あずさ」は、前述した1978(昭和53)年のダイヤ改正で、「あずさ2号」から奇数の「あずさ3号」になります。

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車体を傾斜させることで遠心力を軽減し、一定の乗り心地を保ったまま高い速度でカーブを通過できるE351系電車(2010年4月、恵 知仁撮影)。

 国鉄からJRになったのちの1994(平成6)年、カーブを高速で通過できる振り子装置を備えた新型電車のE351系がデビューし、それを使った「あずさ」は「スーパーあずさ」という列車名に。新宿発午前8時ちょうどの「あずさ」は、「スーパーあずさ3号」へ列車名が変更されました。

 そして2004(平成16)年3月、「スーパーあずさ」と「あずさ」の番号が振り直され、新宿駅から信濃路へ午前8時ちょうどに出発する特急列車は「スーパーあずさ5号」になり、現在へ至ります。

 歌のモチーフと思われる約40年前の下り「あずさ2号」は、松本着が午前11時46分でしたが、振り子装置を備える現在の「スーパーあずさ5号」は1時間以上も所要時間を短縮。午前10時38分に到着します。

実は、いまなお存在している「8時ちょうどのあずさ2号」?

 このように、過去のものになったかのような「8時ちょうどのあずさ2号」。しかし実は、形は異なるものの、通常の特急列車としていまも存在しています。

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2001年に登場し、「スーパー」でない特急「あずさ」に使用されているE257系電車(2010年4月、恵 知仁撮影)。

 現在、特急「あずさ2号」は松本駅始発で、同駅を午前6時8分に出発。そして途中の大月駅(山梨県大月市)を、平日限定で午前8時ちょうどに発車しているのです(土休日は7時59分発)。

 この「あずさ2号」、上り列車であるため「信濃路」へは向かいませんが、新宿駅止まりではなく東京駅行きであることから、“信濃町”駅(東京都新宿区)を通過します。

【了】

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コメント

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3件のコメント

  1. 「あずさ」の所要時間が大幅に短縮したのは、車両側よりも、岡谷~塩尻間の塩嶺トンネルの開通によるショートカット効果のほうが大きいと思います。

  2. 松山千春の「上野発はつかり5号、見送れば夕焼け」も、歌が出た時は16時発だったが、その後エル特急化で「はつかり5号(1M)」は10時頃、夕方出るのは「はつかり11号(1M)」に変わった覚えがあります。青森から連絡船1便に乗って「おおぞら1号(1D)」に乗り継ぐのが北海道への最速列車でした。

  3. 「あずさ」も遂に50歳か。
    “中央東線のヒロイン”を少子高齢化がすすむ今後、我々はあと何年拝むことが出来るだろうか。