赤字鉄道、伊勢エビ駅長に「脱皮」の願い 初代は脱皮で殉職

ネコなどのほ乳類が駅長を務める鉄道駅は特に珍しくありませんが、伊勢エビが駅長を務める駅が徳島県に存在。単に物珍しさだけが狙いではなく、キーワードは「脱皮」、そして「伊勢エビの色」です。そこには開業以来、一度も「あること」を経験したことのない鉄道会社の切実な願いがありました。

意外と切実 伊勢エビが駅長に就任したワケ

 伊勢エビが駅長を務める駅があります。

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宍喰駅の改札付近に設置された“駅長室”(写真出典:阿佐海岸鉄道)。

 場所は四国の“右下”、太平洋に面した徳島県海陽町。阿佐海岸鉄道・宍喰(ししくい)駅の改札付近に設置された水槽は、2匹の伊勢えび「あさちゃん」(メス)と「てっちゃん」(オス)が勤務する駅長室です。

 和歌山電鐵・貴志駅(和歌山県紀の川市)の「たま」(ネコ)をはじめ、ほ乳類が「動物駅長」を務める例は近年、特に珍しくはありません。そうしたなか伊勢エビを駅長へ就任させた理由について、阿佐海岸鉄道は「伊勢エビが沿線の特産品であること」「インパクト」と合わせて、次のように話します。

「開業以来、赤字続きだったもので、そこから脱却したいという思いから、赤い殻を脱皮する伊勢エビにあやかろうと考えました」(阿佐海岸鉄道)

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JR牟岐線から、室戸岬方面へさらに少し延びる形の阿佐海岸鉄道。はじまりは徳島と高知を室戸経由で結ぶ構想だが、途中で工事が止まり、このような形に(国土地理院の地図を加工)。

 阿佐海岸鉄道は、地元自治体などが出資して設立された第三セクター鉄道で、その路線は、徳島駅から海部駅まで南へ79.3km走ったJR四国の牟岐(むぎ)線が、そのままさらに南へ延びる形の海部(かいふ)〜甲浦(かんのうら)間8.5km。「徳島駅から延びるローカル線の末端部分」のようになっています。

 また、沿線の徳島県海陽町と高知県東洋町は、人口がそれぞれ9891人(2016年8月)と2665人(2016年7月)で「過疎地域」に指定されています。こうしたことなどから、阿佐海岸鉄道の輸送密度(1日1kmあたりの平均輸送人員)は106人と少なく、1992(平成4)年の開業以来、黒字になったことが一度もありません。

 環境が違うため単純な比較はできませんが、参考までに記載すると、2016年8月にJR北海道が廃止の意向を明らかにした石勝線の新夕張〜夕張間は、輸送密度118人です(輸送密度はいずれも2015年度)。

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