戦車以上に恐れられる? 憎悪の対象 イスラエル軍の“装甲ブルドーザー”が破壊するものとは?
イスラエル軍の動向を報じるニュースで結構な頻度で「ブルドーザー」という単語が見られますが、実はイスラエル軍が装備する車体はただのブルドーザーではありません。れっきとした装甲戦力です。
ただの「ブルドーザー」ではない車両
2025年8月下旬、イスラエル軍がパレスチナ自治区ガザ地区のガザ市に対し、本格的な攻撃に向けた準備を進めていると報じられました。この件に関して、一部のメディアは「軍用車両やブルドーザーを周辺に展開した」と伝えており、他の報道でも、「イスラエル軍がブルドーザーを投入」「ハマスがブルドーザーをロケット弾で標的にしたと発表」「ブルドーザーがオリーブ畑を破壊」などと報じられています。海外メディアの報道を確認すると、イスラエル軍が運用するブルドーザーの動向が頻繁に取り上げられていることがわかります。

ガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスとイスラエル軍との戦闘が始まってから、そろそろ2年が経過しますが、なぜこれほどまでにイスラエル軍のブルドーザーが強調されて報道されているのでしょうか。実は、同軍が使用しているブルドーザーは、一般的な建設機械とは外見も性能も大きく異なる、特殊な車両であるためです。
イスラエル国防軍が運用しているのは、「D9R装甲ブルドーザー」と呼ばれる車両です。全長約8.8m、幅4.3m、高さ4m、重量は65トンと、ほぼ戦車並みのサイズを誇り、キャタピラー社製ブルドーザーD9Rをベースに改造されたものです。エンジン出力は416馬力に達します。
この車両は軍用仕様に改良されており、運転席には防弾ガラスが使用されているほか、ロケット推進式の対戦車兵器やミサイルへの対抗手段として、金網状のスラットアーマーが装備されています。さらに最大15トンの追加装甲が施され、土を掘削・運搬するブレード部分も装甲化されています。
20年ほど前、アメリカでコマツ製ブルドーザーを装甲化した人物が市街地で暴走した、いわゆる「キルドーザー事件」がありましたが、イスラエル軍は、それと同様の装甲車両を国の正規軍として多数保有・運用しています。しかも、それは暴徒鎮圧用といった用途ではなく、敵対勢力を排除するために、陣地や潜伏先と見なされた建物を“周辺の家屋や公共インフラごと”破壊することを目的に作られたものです。
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