うわさの新型「軽戦車」まもなく登場? 時代遅れか未来形か 中国で進む「統合パッケージ化」
中国北京で予定されている軍事パレードに、新兵器がいくつか初登場する見込みです。その中には、数年前から噂されてきた軽戦車も存在。時代遅れか、未来形か――現在確認できる手掛かりから、その軽戦車の詳細を分析します。
米中の軍事思想の違いが浮き彫りに
一方、アメリカ陸軍が開発していたM10ブッカーは、同じく40t級で105mm砲を備えた「軽量戦車」でした。歩兵部隊への直接火力支援を目的とし、空輸可能な機動力を売りにしていました。しかし搭載センサーや無人システムとの連携は限定的で、重量はM2ブラッドレー歩兵戦闘車(約30t)を上回るなど、空挺部隊には過重な存在でした。最初に受領した第101空挺師団では扱いにくさが指摘され、持て余していたといわれます。
M10は本来、歩兵旅団戦闘団に柔軟な直接支援火力を与えるコンセプトで始まったはずでしたが、開発の過程で要求が膨らみ、結果として重量級M1エイブラムス戦車(約67t)を縮小しただけの存在になってしまいました。そのため「コスト超過」「用途の曖昧さ」「無人機や精密誘導兵器の時代に合わない」との批判を浴び、2025年に調達中止が決定しました。ZTZ-201が登場するのと入れ替わるようなタイミングだったのも皮肉です。
この対比は、両国の軍事思想の違いを浮き彫りにします。無人機が戦場を支配しつつある現代において、中国は軽戦車を「進化するプラットフォーム」と位置づけ、無人砲塔、APS、ネットワーク、ドローンとの連携といった最新技術を組み込んで「未来戦対応の統合兵器」へと可能性を模索しています。対してアメリカのM10は、時代に取り残された「ただの軽戦車」になってしまったのです。
戦車は時代遅れなのか、それとも進化すれば未来戦の主役となり得るのか。中国のZTZ-201とアメリカのM10の対比は注目されます。正解は分かりませんが、南西諸島防衛を念頭に置く日本にとっても、中国のZTZ-201を中核にした戦車・装甲車・ドローン・ネットワークを一体化する「統合パッケージ戦力」の構想は装輪戦闘車ファミリーの整備を進める上で参考になりそうです。
ちなみに、生産済みの約80両のM10については、アメリカ海兵隊が受け取りたい意向を示したとの報道もあります。海兵隊はフォースデザインの組織改編で戦車を廃止しましたが、代替装備の開発・配備が遅れて火力不足に悩んでいるからです。これは、中国のZTZ-201が当初は海軍陸戦隊向けとして語られていたこととも重なり、興味深い一致といえるでしょう。
Writer: 月刊PANZER編集部
1975(昭和50)年に創刊した、50年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。
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