パンダが帰っても孤軍奮闘!? 「パンダくろしお」どうなるのか 喪失感ただよう沿線の“強烈な残り香”

和歌山県白浜町のアドベンチャーワールドからジャイアントパンダ4頭全頭が中国に返還。JR西日本の特急「パンダくろしお」は運行を続けて孤軍奮闘していますが、異変も生じています。そこかしこに“パンダの残り香”が見られました。

パンダは「サステナブル」か?

 一方でシュールなのは、両先頭車の1号車と6号車の車体側面に大きく掲示したジャイアントパンダの写真の傍らに、「持続可能な笑顔」を意味する「Sustainable Smile(サステナブル・スマイル)」というフレーズが躍っていたことです。

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JR白浜駅舎(大塚圭一郎撮影)

「サステナブルSmileトレイン」は、2030年までに世界が持続可能な社会の実現を目指すための国際目標「SDGs(持続可能な開発目標)」をテーマとし、17種類ある目標のうち6種類を6両それぞれで紹介しています。SDGsを紹介する意義はよく理解できるものの、アドベンチャーワールドで飼育されていた4頭全てが中国へ渡ってしまった喪失感のなか、パンダたちの写真を「持続可能な笑顔」で受け止めるのはやや難しいかもしれません。

 また、白浜を含めた紀勢線の沿線の駅にも「今までありがとう また来てね」と記したパンダのポスターがあちこちに貼られていますが、今のところアドベンチャーワールドにパンダが「また来てくれる」確率は低そうです。

 白浜町の大江康弘町長は「『ポストパンダ』の白浜町をしっかりと変えて、引き続き『観光立町白浜町』としてワクワク感を感じていただける街造りをやっていきます」と訴えており、パンダの誘致活動をしないとの姿勢を鮮明にしています。

 客寄せパンダが過去のものとなった今も、「パンダ推し」の”残り香”が漂う白浜町と特急「くろしお」。「日本三大古湯」に数えられる温泉と、海水浴場でも知られている白浜町の魅力をさらに高め、繰り返し足を運びたくなる「持続可能な笑顔」をもたらす観光地へ昇華させることが問われています。

【こみ上げる悲しさ】これが「パンダを失った」沿線の様子です(写真)

Writer:

1973年、東京都生まれ。97年に国立東京外国語大学フランス語学科卒、共同通信社に入社。ニューヨーク支局特派員、ワシントン支局次長を歴任し、アメリカに通算10年間住んだ。「乗りもの」ならば国内外のあらゆるものに関心を持つ。VIA鉄道カナダの愛好家団体「VIAクラブ日本支部」会員。

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