「日本最南端の特急」だけど「日本最南端のJR駅」まで行かない!なぜ? 異色のノンストップ特急 白黒ハッキリせざるを得ない理由
来年に登場から15年を迎えるJR九州の観光列車「指宿のたまて箱」は、運行区間が50km未満、かつ途中ノンストップという異色の特急です。先にある“名所”まで延長しない理由をJR九州幹部に尋ねました。
「日本最南端」なぜ乗り入れないの?
さて、「指宿のたまて箱」が乗り入れない指宿―枕崎間は、「薩摩富士」と呼ばれる開聞岳の周辺に菜の花が咲き誇る時期もあるなど沿線の景色も定評があります。

しかしながら、JR九州幹部は「指宿のたまて箱」の運行区間を鹿児島中央―指宿間から変える予定はないと明言します。その理由として「需要が多い鹿児島中央―指宿間を現行の1日3往復するには、車両運用上、指宿以西(指宿―枕崎)に乗り入れさせるのは難しいため」とし、「利用もそれほど見込めないためです」と補足しました。
確かに指宿―枕崎間の2024年度の平均通過人員は1日当たり216人と、JR九州が24年度実績を公表した鉄道線区では最低です。一方、通学通勤利用が多い鹿児島中央―喜入間は24年度の平均通過人員が1日当たり7958人に上り、喜入―指宿間も2090人でJR九州幹部は「合格点」だと指摘します。
もっとも、人気列車の「指宿のたまて箱」だけに、3両全てを稼働できる日に鹿児島中央―指宿間をキハ47形の2両編成で運行し、残るキハ140形1両を指宿―枕崎間で走らせれば利用者数の「東西格差」の是正に一役買うかもしれません。ただ、指宿―枕崎間で走らせるのに十分な利用が見込める繁忙期であれば、鹿児島中央―指宿間を3両編成で運転しないと供給不足に陥りかねないジレンマを抱えます。
運行区間を延長すれば指宿枕崎線活性化のポテンシャルを秘めた「指宿のたまて箱」ですが、開けて悔しき玉手箱に終わらせないためにはなかなか白黒つかないジレンマの解決が前提となりそうです。
Writer: 大塚圭一郎(共同通信社経済部次長・鉄旅オブザイヤー審査員)
1973年、東京都生まれ。97年に国立東京外国語大学フランス語学科卒、共同通信社に入社。ニューヨーク支局特派員、ワシントン支局次長を歴任し、アメリカに通算10年間住んだ。「乗りもの」ならば国内外のあらゆるものに関心を持つ。VIA鉄道カナダの愛好家団体「VIAクラブ日本支部」会員。
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