有名になっちゃった「秘密のスパイ機」なぜ今も現役…? しかも超“クセ強” 異形の偵察機70年のとんでもヒストリー

アメリカ空軍の異形の高高度偵察機U-2「ドラゴンレディ」が1955年8月に初飛行してから70年。その間、秘密スパイ機として有名になり、冷戦も終結して久しいですが、今も31機が現役です。古希を迎えたご長寿の理由を探ります。

ソ連偵察も中国気球も経験

 1955年8月1日、アメリカ・ネバダ州の砂漠地帯にある空軍秘密施設「エリア51」から、異様に長い主翼を持つ機体が初飛行しました。UFOなど陰謀の噂の絶えない秘密飛行場から飛び立ったのは、ロッキード社が開発した高高度偵察機U-2「ドラゴンレディ」です。冷戦期、ソ連の奥深くを偵察するため、アメリカ中央情報局(CIA)の予算で造られたこの機体は、就役から70年を迎えた現在も飛び続けています。

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飛行中のU-2(画像:アメリカ空軍)

 1950年代初頭、冷戦時代ソ連の情報は「鉄のカーテン」の向こう側に隠され、アメリカの映像情報といえば第二次世界大戦中にドイツ空軍が撮影した写真が頼りという状態。このため、急速に配備が進む核兵器をはじめとするソ連の最新情報収集は、緊急の課題でした。

 そこでカメラを気球に取り付けて大量に放球するという「プロジェクト・ジェネトリックス」が1956年1月に実施されます。気球は確実性にも精度にも欠け、稚拙とさえいえますが、それだけアメリカが焦っていたということです。

 しかしこの焦燥感から、とんでもない偵察プラットフォームが構想されます。ソ連の迎撃機が到達できない高度2万m以上を巡航し、作戦半径約2800kmを達成できるという偵察機開発の提案依頼書が発出されます。通常の旅客機の飛行高度である約1万mの倍の高度まで上がることを要求したのです。

 その要求に応えたのが、ロッキード社でした。完成したU-2は、空気の薄い高高度成層圏を飛ぶためにグライダーのような長大な主翼を備えた単発機でした。徹底的に軽量化され、着陸装置は通常の三輪式ではなく自転車のように前後1輪ずつを直線に配置。離陸時には「ポゴ」と呼ばれる補助輪を翼の中ほどに取り付け、滑走中に脱落させました。

 操縦は非常にシビアです。パイロットには宇宙飛行士のような与圧服が必要です。高高度では失速速度と最大速度の裕度は19km/h程度しかなく、少しの操作ミスで失速してしまいます。

 逆に低高度では揚力が強すぎて、着陸は地面効果が作用して難しく、完全な失速状態でようやく接地することができます。しかも機首が長く、パイロットは宇宙服のヘルメットを着用しているため、滑走路がよく見えません。そのためU-2の別のパイロットが滑走路を車両で追走し、高度や向きを指示して操縦を支援しなければなりません。

 任務もシビアでした。U-2はしばしば「鉄のカーテン」を越えてスパイ飛行で領空侵犯しました。機密保持のため、当初はパイロットに任意で自殺用の青酸カリカプセル「Lピル」が支給されました。実際に使用されたことはありませんでしたが、誤飲事故は発生しています。

【激写】U-2から捉えた中国の「偵察気球」を見る(写真)

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コメント

1件のコメント

  1. 今年のEAAオシコシ・エアベンチャーに、このU-2が飛来してきたそうだが

    本ニュースのライター陣の中で、実機を間近で観たという方もいらっしゃるのでは…

    それにしても高度70000ft(約20㎞)で空気密度が地上の約1/20というスカスカの大気の中を

    こんな長大な翼をもった機体がマッハ0.8で飛ぶ…それもわずか10kt落ちただけでもう失速…

    これ、滑空機乗りの人ならどう思うだろうか…

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