幸運艦? いいえ「強運艦」です! 旧海軍の不沈艦「雪風」に見た “人の絆” とは

陽炎型駆逐艦19隻のうち唯一、大戦を生き延びた「雪風」。主な海戦に参加しながらも生還し「不死身」といわれましたが、なぜ強運艦と呼ばれるのか、その理由を振り返ります。

乗員の練度も高かった「雪風」

 ただし、測距儀用の小窓から上半身を乗り出した状態では声を出しても届かないので、寺内艦長は自身の足元に立たせた伝令の肩を蹴って指示を出しました。右肩を蹴られたら「面舵(おもかじ:右旋回)」、左を蹴られたら「取舵(とりかじ:左旋回)」と伝令が叫ぶようにして、その声を艦長の命令と操舵手が受け取り、その通りに舵を切るのです。

 また寺内艦長は、大型三角定規のような簡易測距儀を手にしていました。これで無数の敵機の中から危険な動きをしている敵機を見分け、的確な操艦指示を出していました。

 戦時中に建造された、例えば秋月型のような駆逐艦は、防空指揮所を設けていて、多くの見張り員が置かれていました。しかし混乱状態の中での報告には、時に誤報も混ざり、艦長の判断を狂わせる危険があります。

 対空戦闘用の貧弱な設備を逆手に取った、寺内艦長のシンプルな解決策が、「雪風」強運の秘密でした。けれども、寺内艦長1人の力で実現できた強運ではありません。「雪風」は他の艦の乗組員から、「応急や内務の訓練密度が突出していた」と評価されています。

 寺内艦長が着任するまでに、「雪風」はスラバヤ沖海戦や南太平洋海戦、第三次ソロモン海戦に参加しながら、艦も乗組員もほぼ無傷で生き残っているのです。

 規律と訓練、そして互いの絆が、これ以上望めないほど揃った「雪風」を引き継いだという幸運があったからこそ、寺内艦長は強運を引き寄せることに成功し、結果「雪風」は大戦を生き抜くことができたのではないでしょうか。

【引き渡し前の大掃除?】ピカピカに磨き上げられた駆逐艦「雪風」の艦内(写真)

Writer:

1973年生まれ、上智大学文学部史学科卒業、東京都立大学大学院人文科学研究科中退。 雑誌編集者、ゲーム会社ウォーゲーミングジャパン勤務等を経て、各種メディアにて歴史・軍事関連の執筆や翻訳、軍事関連コンテンツの企画、脚本などを手がける。Youtube「宮永忠将のミリタリー放談」公開中。

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