80年ぶり「日の丸巡洋艦」復活か? 巨大護衛艦の艦種を刷新へ「CVM=空母」じゃない “真の意味”とは
2024年10月28日付の訓令により、海上自衛隊の艦艇に関する新たな艦種記号が設けられました。その中でも、ひときわ目を引いたのが「CVM」という文字。一見すると諸外国の海軍でいう「空母」を意味するように見えますが、そう単純な話ではないようです。
「CVM」のなかにフランス語あり
まず、CGについては「Cruiser Guided-missile」、すなわち「ミサイル巡洋艦」のことで、2027年および2028年に就役が予定されている「イージス・システム搭載艦(ASEV)」に付与される予定です。

そして、気になるのが、もうひとつの「CVM」でしょう。アメリカ海軍の航空母艦(空母)などは「CV」という艦種記号が付与されます。ゆえに、それらになぞらえて「多目的航空母艦」を意味するようにも見えます。
ところが、海上幕僚監部広報室によると、これは「Cruiser Voler Multipurpose」の略で、日本語では「航空機搭載多機能護衛艦」と呼称され、改修を終えた段階のいずも型護衛艦がこれに該当するとの回答でした。
いずも型護衛艦は、1番艦「いずも」と2番艦「かが」からなり、前者が2015(平成27)年に、後者が2017(平成29)年にそれぞれ就役しています。このタイプは当初、ヘリコプター搭載護衛艦(DDH)として運用されていました。しかし、2020年度から順次進められてきた改修作業により、固定翼戦闘機であるF-35Bの運用能力が追加されるため、今回新たにCVMの艦種記号が付与されるに至ったと海上幕僚監部広報室では述べています。ただし、CVMの記号が付与されるのはあくまでも改修完了後であり、現段階では2隻とも従来通りDDHのままである、とのことです。
ちなみに、CVMの「C:Cruiser」については、従来の護衛艦よりも船体が大型化したことを受けてDestroyerから改められたとのことですが、その後ろの「V:Voler」とはフランス語で「飛ぶこと」を意味する単語であり、固定翼機を含む航空機の運用能力を示す言葉として加えられたそうです。先述したアメリカ海軍の「CV」も、語源は同じく「Cruiser Voler」という説が有力ですが、海上幕僚監部広報室によると「艦種記号は各国が独自に設定しているものであり、アメリカのものを参考にしたわけではなく、日本独自の意味を示すものとして設定をしたものです。従って、CVMが航空母艦を意味するわけではありません」とのことです。
なお、これに伴う艦番号は変更ないため、艦首に書き込まれる数字は従来どおり「いずも」が183、「かが」が184で変わりません。
Writer: 稲葉義泰(軍事ライター)
軍事ライター。現代兵器動向のほか、軍事・安全保障に関連する国内法・国際法研究も行う。修士号(国際法)を取得し、現在は博士課程に在籍中。小学生の頃は「鉄道好き」、特に「ブルートレイン好き」であったが、その後兵器の魅力にひかれて現在にいたる。著書に『ここまでできる自衛隊 国際法・憲法・自衛隊法ではこうなっている』(秀和システム)など。
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