西日本屈指の「秘境ターミナル駅」、なぜここまで衰退したのか? 夜行列車も立ち食いそばもあった最盛期 今も食べられる!?

JR備後落合駅は、芸備線と木次線が接続する“交通の要衝”であり“秘境駅”でもあります。開業当初から鉄道の「ジャンクション」となるべくしてなったこの駅は、どのように衰退していったのでしょうか。

今も食べられる「駅の名物」

 急行「ちどり」は基本6両編成で、1等車(現在のグリーン車)も連結していました。スキーシーズンの臨時列車は最大8両編成の盛況。島式ホームの2・3番線では立ち食いそば・うどん屋も営業しており、「おでんうどん」が名物だったといいます。

 なお、この名物は備後落合駅から徒歩15分ほどの「ドライブインおちあい」で、現在でも毎年9月~翌年5月に提供されているとのこと。なお現状、同店は駅周辺で唯一の飲食店であり、飲料の自動販売機もあります(駅には自販機なし)。

 しかし備後落合駅のにぎわいは、1972(昭和47)年の山陽新幹線岡山開業の頃から変化を見せます。

 新幹線と接続する特急が走る伯備線が、山陽と山陰を結ぶメインルートになったうえ、高速道路の開通も重なり、1980年代から90年代にかけて備後落合駅に乗り入れる急行が相次いで廃止・減便・区間短縮されていきました。

 2002(平成14)年には急行「ちどり」「たいしゃく」が広島~三次間の急行「みよし」に統合されたことで、備後落合には急行が来なくなります。「みよし」の一部が普通列車として備後落合に乗り入れたものの、2007(平成19)年にこれも消滅し、広島方面からの直通列車もなくなってしまったのです。

 備後落合駅は現在も長いホームや側線、転車台もあり、かつての栄華をしのぶことができます。駅構内には最盛期を振り返る写真などが多数飾られ、荒れ果てた様子はありませんでした。不定期ながら、永橋さんが駅の最盛期を忠実に再現した鉄道ジオラマを公開することもあります。

 芸備線は2025年11月24日までの土休日に、実証実験として広島~備後落合間、備後落合~新見間で臨時列車が運行されています。普段はダイヤが不便なことから、到達しにくいという意味で「秘境駅」と呼ばれる同駅ですが、訪れるなら「今」ではないでしょうか。

【え…!】これが今の「備後落合駅」です!(写真)

Writer:

ゲーム雑誌でゲームデザインをした経験を活かして、鉄道会社のキャラクター企画に携わるうちに、乗りものや歴史、ミリタリーの記事も書くようになった乗りものライター。著書『日本全国2万3997.8キロイラストルポ乗り歩き』など、イラスト多めで、一般人にもわかりやすい乗りもの本が持ち味。

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