“おもちゃメーカー”がなぜ「ガチの軍事ドローン」を? 技術力を買われて進出 展示会では人だかり!

2025年9月に台湾で開催された防衛・セキュリティの総合イベント「TADTE」で注目を集めたのが、台湾の無人装備品開発をリードするサンダータイガー社です。実はこの企業玩具メーカーという異色の経歴を持っています。

おもちゃ・医療・軍事と多彩に

 その後サンダータイガーは精密加工技術を活かして医療機器分野にも進出しましたが、並行してラジコン事業も進めています。2016年には台湾の逢甲大学と共同で「電動ツインローター無人ヘリコプター」を開発、2018年にはシンガポールの水素燃料電池開発会社と共同で世界初の水素燃料電池無人ヘリコプターも発売しています。

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サンダータイガーが出展した攻撃用UGV。徘徊型弾薬(自爆型ドローン)のランチャーを装備している(竹内 修撮影)

 2020年には、台湾の大手通信会社である中華電信と協力して「軍用緊急航空基地局システム」を構築して台湾軍の演習に参加、この演習でサンダータイガーの技術力、とりわけ電波制御技術を高く評価した台湾軍から、前に述べた「シーシャーク」の開発を依頼されるようになり、無人装備品の開発に本腰を入れることになったというわけです。

 日本にもドローンなどの無人装備品を手がけるメーカーは多数存在しますが、そのほとんどは無人装備品の開発を目的に立ち上げられた企業です。加速器関連機器の開発と製造で培った精密加工技術を武器にUAS(無人航空機システム)の開発・製造へ参入したフジ・インバック(横浜市)のような企業もありますが、そう多くありません。

 10月3日付の「Jディフェンス」は、日本の防衛産業とアメリカの軍および防衛関連企業とのマッチングの機会を提供するため防衛装備庁が主催した「第4回インダストリーデー」の稲葉義泰氏によるレポート記事が掲載。そこでは、芝刈り機用のエンジンを製造しているものの市場の将来性に限界を感じて、芝刈り機用エンジンの開発で培った技術を活用し、アメリカの企業と組んでUASを共同開発したカーツ株式会社(岡山市)が紹介されています。

 大手企業や専業のスタートアップ企業だけでなく、フジ・インバックやカーツ、そしてサンダータイガーのように、創業時から培われた確かな技術を持つ企業が参入すれば、日本の無人装備品の開発技術力は、より強固なものになると筆者は思います。

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Writer:

軍事ジャーナリスト。海外の防衛装備展示会やメーカーなどへの取材に基づいた記事を、軍事専門誌のほか一般誌でも執筆。著書は「最先端未来兵器完全ファイル」、「軍用ドローン年鑑」、「全161か国 これが世界の陸軍力だ!」など。

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